出版社内容情報
ライバル画家2000人、流通した絵画500万点。
繁栄と恐慌、戦争、感染症──。
不朽の名画を生んだ絵画の黄金時代は、
空前の競争市場〈レッドオーシャン〉だった!
17世紀オランダの絵画市場と
画家の生き残り戦略に迫る、美術史研究の最前線。
山口周氏 推薦 ──冷え込むマーケットと格闘した画家たちの「生き残り戦略」は、知恵と勇気を与えてくれる。
内容説明
競合2000人、流通作品500万点。繁栄と恐慌、戦争―。オランダ絵画の黄金時代は空前の競争市場だった!名画とマーケット。美術史研究の最前線。
目次
序章 静謐と喧騒
第1章 浮かぶか、沈むか―一七世紀オランダの絵画市場
第2章 マーケットと対峙する画家たち
第3章 絵画流通の五つのルート
第4章 風俗画の成立とアート・マーケット
第5章 最盛期のオランダ風俗画家たち
第6章 アート・マーケットのなかのフェルメール
第7章 似ていないが似ている―画家たちの生き残り戦略
終章 未完のフェルメール
著者等紹介
小林頼子[コバヤシヨリコ]
1948年生まれ。目白大学社会学部教授を経て、同大学名誉教授。専門は17世紀オランダ美術史、日蘭美術交流史。82~85年、ユトレヒト大学美術史研究所留学。87年、慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。『フェルメール論』(八坂書房)および『フェルメールの世界』(NHKブックス)の2著で第10回吉田秀和賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
111
欧州の美術館では、どこでも17世紀オランダ絵画が広いスペースを占める。これほど大量の絵画が小国で生み出された事情を、美術史のみならずオランダの国家成立と社会状況を含め推理小説的に解明していく。独立を果たし富裕化した市民層が家に絵を飾るようになり、需要に応じてアートビジネスが発展し買い手の求める傾向の絵が供給されたのだ。大半の絵が黒を基調としているのも、色を節約し量産を可能にするためとは。この戦略に乗れた画家は成功したが、レンブラントやフェルメールは乗り損ねていた。美術が消耗品扱いの時代が確かにあったのだ。2022/03/03
泰然
30
もし「光の魔術師」フェルメールが多少でも長命したら何が表れたか?17世紀のオランダを舞台に経済と絵画市場の繁栄と恐慌のなか、現代の私達の心を捉えて放さない、美麗な日常のひとコマを寓意や物語と共に表現した数々の風俗画の裏舞台研究が展開される。プロテスタントの影響で偶像化を避けながらも古典物語の影響を感じる家庭画、中間・富裕層の発展と需要に応じる絵画家達の戦略。熾烈な自由競争が生んだ「似ているが似てない」作品を描き続ける相反現象などの考察は新しい美術鑑賞視点の提供と、現代商業にも通じるサバイバル精神を与える。2022/03/03
岡本正行
21
フェルメールが絵画を創作した背景、寡作だった理由、なんとなくわかった。当時のオランダでは、金持ちから庶民まで家の中の壁に絵画を飾り付けるのが流行していた。それに、どのような絵を飾るかが、また競いあっていたようだ。しかし、流行が変化し、またオランダの国力も低下していくと、絵描きと絵画商が同じ人物になったり、兼ねたりするようにんった。また絵画の内容も、通常の生活を描くものも減り、だんだんと絵画の人気もなくなっていた。ベラスケスも、同様な時代にいた。流行の絵かきとそうでないもの、何事もそうではあるが。2022/09/11
冴子
16
フェルメールを観に行くための予習として、オランダと絵画について読んでみた。本としては全く面白くなかったが、以前観た「チューリップ•フィーヴァー」を思い出した。日本にも影響を与えたオランダという国の意外な文化を知ることができた。多くの絵画が散失してしまっているのが惜しい。2023/10/12
kamekichi29
9
17世紀あたりのオランダのアートビジネスに関する考察という感じ。アートマーケットのトレンドと画家たちの対応など。フェルメールの作品の明らかな変化が自身の技巧の変化なのかあるいはマーケットの流れに対応したものなのか、という疑問を皮切りにして同じ時期の画家多数を考察されている。2022/03/16