出版社内容情報
日本人の「葬儀」はどのような歴史をたってきたのか。各地に伝わる葬送や墓制の実態と意味を検討し、そこに現れる日本人の死生観、他界観、民俗的心性を探る。現代人の終末を考える基礎となる民俗学の名著。
内容説明
弔いをめぐる民俗には、歴史の中で伝えられてきた生と死の思想がひそんでいる。古代天皇や中近世の葬送儀礼、生死の境界における「米」「火」「石」の意味、盆の行事や花いちもんめ、便所の神さま伝承の背後にある他界への憧憬。死という絶対に、日本人はどのように向き合ってきたのか。私たちは、なぜいま葬儀と墓をめぐる変化と混乱の中にいるのか。柳田國男や折口信夫の問いを継承し、新たな時代の医療や死生観に接続する民俗学。
目次
現代人と死―序にかえて
1 葬儀の深層(葬送儀礼;米の霊力;火とケガレ;生と死と水辺の石)
2 葬儀の歴史(古代天皇の葬送と殯宮;平安貴族の葬送儀礼;中世の葬儀;近世の葬送習俗)
3 他界への憧憬(盆に来る霊;人を神に祀る風習;儀礼と他界観;花いちもんめ)
著者等紹介
新谷尚紀[シンタニタカノリ]
1948年、広島生まれ。77年、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得。社会学博士。国立歴史民俗博物館教授、国立総合研究大学院大学教授、國學院大學文学部教授などを歴任。現在、國學院大學大学院客員教授、国立総合研究大学院大学・国立歴史民俗博物館名誉教授。多数の著書がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アルカリオン
11
《民俗の思想はつねに無意識的であり、人を神に祀りその意味付けを拡大する立場の人も、それに同調する人も、たがいにその功罪や危険性については無自覚である場合が多い。無意識的であり無自覚であるだけに無責任でもある。よしんばそれが十分に自覚されたとしても、民俗の思想と行動は集団的思惟であり行動であって、伝統的なものであるだけに、なかなかとどめようもない。》p331/4472021/09/11
Go Extreme
3
葬儀の深層:葬送儀礼 米の霊力 火とケガレ 生と死と水辺の石 葬儀の歴史:古代天皇の葬送と殯宮 平安貴族の葬送儀礼 中世の葬儀 近世の葬送習俗 他界への憧憬:盆に来る霊 人を神に祀る風習 儀礼と他界観 花いちもんめ2021/10/12
青沼ガラシャ
2
お葬式トリビアでも書いてある本かな、と気軽に読み始めたら想像を裏切られた。日本人の死生観に真正面からガップリ四つに取り組んだ大著で事例、参考文献も多数、注釈も詳細。特に葬儀の際に死者の骨を口に入れる「骨こぶり習俗」は興味深く、参考文献をすぐにポチッた。2023/10/29
しょうゆ
1
葬送儀礼、死生観、葬送の歴史などボリューム満点の一冊。事例が多すぎる上細かすぎるのがちょっと難点かな…面白いんだけど、詳しすぎて読み飛ばし気味になっちゃいました。全体的に興味深く読みましたが、特に出産の儀礼との対比、女性の役割、昔話や昔ながらの遊びから繙く葬送文化、人が神として祀られる過程についての部分が面白かったです。2022/07/26