出版社内容情報
異界、エロ、グロ、ナンセンス、スキャンダル……古事記研究の第一人者が、古代の思想を読み解き伝える面白すぎる古典文学入門! 文庫版に「第5章 揺らぐ列島、疲弊する人々」を完全書き下ろし!
内容説明
現代日本が抱えるさまざまな病根は、7、8世紀に萌芽した!?死への恐れ、衰えない肉体へのあこがれ、純愛やスキャンダル、殺人鬼の出現や親子の断絶…現代でも起こる出来事が『古事記』『日本書紀』『万葉集』『風土記』『日本霊異記』など約1300年前の古代文学に描かれている。国家の動きや権力の移動といった学校で習った歴史ではなく、ふつうの人びとが何を考えていたか、どのように暮らしていたかを読み解き照らす入門書。
目次
第1章 異界を旅する
第2章 女と男/男と女
第3章 エロ・グロ・ナンセンス
第4章 スクープされた事件
第5章 揺らぐ列島、疲弊する人びと
終章 苦悩する時代の物語
著者等紹介
三浦佑之[ミウラスケユキ]
1946年、三重県生まれ。成城大学文芸学部卒業。同大学院博士課程単位取得退学。共立女子短期大学教授、千葉大学教授、立正大学教授などを歴任。千葉大学名誉教授。専攻は古代文学、伝承文学研究。著訳書に『村落伝承論』(五柳叢書、第5回上代文学会賞)、『口語訳 古事記(完全版)』(文藝春秋、第1回角川財団学芸賞)、『古事記を読みなおす』(ちくま新書、第1回古代歴史文化みやざき賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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れいまん
4
著者のセミナーでサイン入りで購入したもの 勇んで読む。古代人は現代人と同じとか、出来事に対応する行為や、行動、考え方も同じという説はその通りと思う 古典をよむのは現代を考える事だ!2021/11/26
シマ
1
夜は神の時間、昼は人間の。その境は神と人間が入れ替わる危険な時間だが、祭りの夜だけは人間が神とともに過ごす。それが律令制度の下での都市型社会の形成によって、変質したという。それがかぐや姫の物語にある。かぐや姫は月の都のお姫様で罪を犯したため地上に降ろされ、言い寄る男たちに無理難題を持ちかける。それに対し、くらもちの皇子は行ってもしない伝説上の蓬莱山への往還の物語をでっち上げる。異界である蓬莱山の否定。異界などないという意識と、ベースにある月から来たかぐや姫という異界幻想。この二重性は現在につながるという。2022/12/13
ゆきんこ
1
各テーマに沿った形で、古代文学のいろんな側面を垣間見ることができる一冊。知っている逸話から初めて知る逸話まで、興味深く読めたかと。何となく難しそうだな…とぼんやり思っていた世界が、思いの外、現代にも通じるものがあることに気づかせてくれる。不明瞭な部分が多いからこそ、いろんな解釈が生まれて、またそこから物語が生まれていったんだろうな…と思うと面白いな、と。2021/12/26
とむ
1
古事記、日本書紀、万葉集、日本霊異記などの古典の内容を紹介し、時代背景からの考察、その裏に隠された意図についてなどが分かりやすく論じられている。第一章の異界について、第四章の古代史のスキャンダルについてが興味深かった。2021/09/30
晴
0
あとがきで「入門書だから分量はほどほどにとか、だれでも知っている題材をとか、あまり刺激的なものは避けてとか、そのような配慮や忖度が入門書をつまらなくさせてきた」と語っているように、刺激的な筆致であるけれど、入門書という役割を逸脱していない(「入門」を標榜しながら読者を置いてけぼりにする本のなんと多いことか)。惜しむらくは、次のステップとなる本を薦めてくれない点だろう。2021/10/27