内容説明
鎌倉時代初め、源顕兼により編修された『古事談』は、王道后宮・臣節・僧行・勇士・神社仏寺・亭宅諸道の6巻から成る説話集。後続の『宇治拾遺物語』『古今著聞集』にも大きな影響を与えた。好色譚「称徳天皇が道鏡を愛した事」から始まり、貴人の逸話や故実・奇譚・霊験譚まで、王朝社会の多彩な説話が満載。清少納言・藤原道長・平将門・安倍晴明も登場。70話を厳選し、原文・現代語訳と書き下し文に解説を付した決定版!
目次
第1 王道后宮
第2 臣節
第3 僧行
第4 勇士
第5 神社仏寺
第6 亭宅諸道
著者等紹介
源顕兼[ミナモトノアキカネ]
1160(永暦元)‐1215(建保3)年。鎌倉前期の公卿。源宗雅の子。刑部卿を務める一方で、藤原定家とも親交があり、有職故実にも精通していた。1211(建暦元)年、52歳で出家後、説話を収集し、『古事談』6巻を編修した
倉本一宏[クラモトカズヒロ]
1958年、三重県津市生まれ。東京大学文学部国史学専修課程卒業、同大学大学院人文科学研究科国史学専門課程博士課程単位修得退学。博士(文学、東京大学)。国際日本文化研究センター教授。専門は日本古代政治史、古記録学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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マカロニ マカロン
16
個人の感想です:B。先月読んだ『小右記』からかなり題材を得ている説話集。鎌倉時代初期に書かれている。この本は全部で460話あるうち70話を選び、現代語訳、読み下し文、原文、解説の順で掲載。最初の話が称徳天皇(女帝)が道鏡の巨根では満足できず山芋の張型を入れたら抜けなくなって死んだ事件、いきなり下ネタかよとその後もある。天武系の称徳天皇を悪く書いて、天智系への移行をスムースに進めるためだろうという。大河ドラマ『光る君へ』の道隆、道長、一条天皇、紫式部、父為時、娘賢子も漏れなく登場するので、とても楽しく読めた2024/09/08
chang_ume
9
称徳道鏡密通説や白河待賢門院密通説(および崇徳叔父子説)など、今も流布され続けるゴシップの元ネタ集。他方で、摂関家(御堂流)への風刺通底も特徴で、権門交替が際立った古代中世移行期における宮廷社会の一視点を垣間見るような印象。また原文・書き下し文・現代語訳の併記がありがたく、変体漢文の学習にも役立った。本書収録以外には、「道長高野登山之間事」(高野山奥の院開扉)、「長手於冥途抱銅柱事」(西大寺塔由来と堕地獄説)、「満兼清水帰途遭敵人事」(六道辻の史料初見)あたりもおすすめ。コラムも充実。2025/02/20
fseigojp
9
結構あけすけな宮廷スキャンダルも書かれてあり、思いの外に現代的だった2021/04/11
わ!
8
鎌倉時代の初期に書かれた説話集です。その時代に伝わった色々な文献から、(おそらくは編者が)興味のわいた記録を、まとめ直した本です。内容的には忌憚のない話が多く、称徳天皇の好色譚から始まったりするので驚いてしまいます。書かれている説話の時代のはばも広く、聖武天皇の話から、この書が書かれた順徳天皇の時代まであるようです(この文庫に載っている話は少ないので、すべての時代分はないけれど…)。史実ではない話も多いのですが、解説文が詳しいので問題なく、当時の人たちがどの様な事柄に興味があったのか解って面白いです。2024/03/22
楽ちま
0
このシリーズとしては少し長い(他は200P台だからねぇ)けど、サクサク読めた。 抄出している本だから、この1冊だけで古事談の全てを理解はできない(特に説話だし)だろうけど、宮廷の内側をよく見られる書物だと思った。倉本先生が指摘なさっているように、著者は小右記等を参考にしているというのも納得出来る。 欠点は、例えば十訓抄にも載っている説話に、どの章に載っている話か、というのが記されていないところ。保昌が一騎当千の武者を見抜いた話を、十訓抄で調べたのだが、すぐ見つけられなかったので、記してあると良かった2022/04/26