出版社内容情報
在原業平がモデルとされる男の一代記を、歌を挟みながら一二五段に記した短編風連作。『源氏物語』にもその名が見え、能や浄瑠璃など後世にも影響を与えた。詳細な語注・補注と読みやすい現代語訳の決定版。在原業平がモデルとされる男の一代記を、歌を挟みながら一二五段に記した短編風連作。『源氏物語』にもその名が見え、能や浄瑠璃など後世にも影響を与えた。詳細な語注・補注と読みやすい現代語訳の決定版。
石田 穣二[イシダ ジョウジ]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
60
美男子で才能豊かであったものの、世は藤原氏全盛の時代で、その才能を開花させることも出来ず、不遇のまま生涯を閉じた在原業平がモデル。業平といえば二条皇后高子とのロマンスが有名だが、四段からの高子にまつわるいくつかの段は、親に権力がないために出世もできずにいる業平の想いが切々と描かれている。恋の話だけでなく、惟喬親王との交友を描いた82、83段、母への想いを描いた84段も趣深い。また、『源氏物語』若紫の巻の光源氏が紫の上を垣間見るシーンは、初段をもとにしたもの。原文、現代語訳、解説もついた読み易い本。2017/03/14
しゅてふぁん
37
古今和歌集や新古今和歌集を読んでいると、伊勢物語の和歌をちょくちょく見かける。部分的には知っているけれど、せっかくなので全文読んでみた。昔男、在原業平の一代記。 さすがに有名な段の『芥河』や『東下り』、『筒井つの』の和歌は素敵だなぁ。第四段の『月やあらぬ~』、第八十二段の『世の中に~』、第六十九段の『~夢かうつつか寝てかさめてか』も好きだな、とキリがない(笑)業平の色男っぷりを堪能しました!2017/11/03
沙智
18
各章段が短く読みやすかった。原文→現代語訳→原文の順で読んだ。古語特有の流麗なことばの響きが美しかった。携帯電話のない時代、会えない時間の寂しさや別れの辛さは、今を生きる私達とは比べ物にならなかったのだろう。朝顔、雲、桜、蛍といった自然を見つめる眼差しには、物や情報が溢れかえった現代社会に生活する人間達にはない、鋭さがあった。しかし、人が人を恋い慕う気持ちの激しさは昔も今も同じだった。今度はもう少し長めの古典文学に挑戦したい。2019/06/19
冬見
14
歌の解釈はさておき、地の文は簡易で読みやすい。文学作品に限らず、演劇や絵画でも度々登場する『伊勢物語』。一度読んでおけば楽しみ方の幅が広がるかなと思い、手を出した。好きな段・歌がたくさんあって満足。注釈も丁寧でよい。2016/12/20
大先生
11
在原業平を主人公とする歌物語。「むかし、男(ありけり)」で始まる全125段。いろんな女に手を出した記録(笑)手を出しておきながら田舎くさいとか可哀想。第69段に伊勢斎宮が登場するものの、なぜ「伊勢物語」なのかは今でも謎だそうです。「ついに行く 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは 思はざりしを」人間いつか死ぬのは当然ですが、自分が死ぬのが昨日今日とは思ってみなかったと。自分が死ぬというのは、直前になるまで具体的には想像できないものなのですね。2024/11/06