内容説明
『源氏物語』では漆黒の長い垂髪が美人の条件として描かれ、女は黒髪のために日に何度も梳り、米のとぎ汁で髪を洗っていた。武家社会では髪を結うようになるが、時代とともに髷は実用性を離れて華美になっていく。男も髪が薄く髷が結えなくなると「添え髪」をし、白髪は墨で染めてごまかした。なぜ黒髪は「美しい」とされるのか。数多くの文献を渉猟し豊富な図版とともに、髪形が社会に規定されてきた歴史を明らかにする。
目次
第1章 「盛り髪」の流行
第2章 昔は、人生の節目に髪を削いだ
第3章 長い黒髪は美人の条件
第4章 髪の長さは身分に関わる
第5章 武家社会で認められた結髪
第6章 結髪が美の対象へ
第7章 女髪結の登場と髷の多様化
第8章 より美しく、華やかに
第9章 結髪が害となる
第10章 削ぐことの自由
第11章 盛り髪も髷も、心は同じ
著者等紹介
平松隆円[ヒラマツリュウエン]
1980年、滋賀県生まれ。化粧心理学者、東亜大学芸術学部准教授、トータルビューティ学科長。2008年、化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。国際日本文化研究センター機関研究員(講師)、京都大学中核機関研究員、タイ国立チュラロンコーン大学専任講師を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Chicken Book
10
いつの時代も女性はかわいく美しく見られたい。それが江戸時代の結髪ブームと21世紀の盛り髪ブームに見て取れる。ただし、結髪は不衛生、不経済、不便益であるため、一部の女性が結髪をやめ、束髪を広める運動を始めた。当時の女学生はやはり賢いので色々と効率の悪い結髪をやめたが、しばらくは世間からズボラだ、不美人だという目で見られる。でもやはり、体を動かし、勉強するには髪を無駄に飾る必要性はない。現在ではむしろ校則で髪に関するルールが敷かれるようになっている。そして今度は女学生の側からその縛りに抵抗しようとしている。2021/11/04
はちめ
6
著者の経歴に化粧心理学とあるが、本書は日本における髪型変遷の大まかな歴史を扱ったものである。図版もそこそこ入っていて、古典文学などからの引用も多く、信頼できる内容となっている。本書は2005年頃から流行した盛髪と日本古来の髷との関連性から発想されたとのことだが、今現在はどうなっているのだろうか。直近の流行とのことであるグレイヘアという言い方も知らなかったが、髪型やその言い方が時代の心理を映すということは案外あるのかもしれない。☆☆☆☆2019/08/12
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