内容説明
食べ物を何ももたないウサギは炎にとび込み、自らの肉を布施に捧げた。このウサギこそ釈尊の前世の姿であった―。古代インドの仏教徒が口づてに伝えた説話集ジャータカ。輪廻転生思想のもと、国王、バラモン、商人、そして動物から神まで、さまざまな生を描く物語は、今昔物語集や歌舞伎をつうじて日本でも親しまれてきた。詩と散文によって彩られ、利他と自己犠牲の理想を描きあげた説話文学集のエッセンスを一冊にまとめる。
目次
第1章 ジャータカとはなにか
第2章 動物としての旅路(大猿;金色鹿;烏と孔雀;ウズラ ほか)
第3章 人としての旅路(捨身飼虎;ウダヤ王 ほか)
第4章 神としての旅路(嫁と姑;ジャッカル ほか)
著者等紹介
松本照敬[マツモトショウケイ]
1942年生まれ。早稲田大学第一文学部哲学科卒業。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了(印度哲学)。文学博士。インド思想史専攻。オランダのライデン大学に留学したのち、立正大学短期大学部教授、大東文化大学教授などを経て、成田山仏教研究所首席研究所員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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不識庵
13
この説話集は、読む者に因果を教訓として説いてきただろう。しかし現代において、読者が本書を読んで素直に教化されるとは思えない。 そのような読み方はもう古い。教訓話の認識から離れよう。これは釈尊が仏陀になる前、すなわちゴータマ・シッダルタの生が始まる前の物語である。釈尊がいくつもの輪廻を繰り返して、見てきた人々の姿が語られる。人は二千年を数えても変わらない。一瞬前までの善人が、ふとしたきっかけで悪に落ちる。そういう業の深さが私の胸に残った。釈尊はそういう人間をずっと見つめてきたのである。自在への道は遥かなり。2019/07/27
大先生
9
「ジャータカ」とは古代インドの仏教説話。日本語では、「本生話」と呼ばれるお釈迦様の前世の物語で、本書では31のジャータカが紹介されています。「わが身を捧げたウサギ」は今昔物語集にも取り入れられているので、日本でもお馴染みのお話。ウサギはお布施するものを持っていなかったため、焚き火に飛び込み自らをお布施しようとした「捨身供養」がテーマのお話ですが、ジャータカではこのウサギが釈迦の前世だったとされています。他の話も、仲間を作れ、善行を積め、吝嗇は駄目…等など様々な教訓話。私も少し心が洗われたような気がします。2021/05/05
じゃくお
1
本当は全集にてジャータカを読みたかったのだが、旅行中に読む本を探している折に気になったため、持ち運びしやすい文庫本ということもあって購入した。古代インドの教訓的な寓話を仏教に取り入れたものなのだろう。そのため仏教思想は薄く、個人的には仏伝文学の方が好きかな。2024/09/07
toki
1
ときどき唐突にディーバダッタがディスられててふふってなった。ディーバダッタ教団は玄奘三蔵がインドに渡った7世紀にまだ存在していたらしいので、仏教成立が前5世紀でディーバダッタもそのころの人だから、かの教団は千年以上続いていたわけで、ディーバダッタもただの悪人ではなかったのだろうな。2019/06/06
はしめ
1
夜叉と青年が気になった。
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