出版社内容情報
山で高笑いする女、赤い顔の河童、天井にぴたりと張り付く人……岩手県遠野の郷にいにしえより伝えられし怪異の数々。柳田國男の『遠野物語』を京極夏彦が深く読み解き、新たに結ぶ。新釈“遠野物語”。
内容説明
岩の上の肌が抜けるように白い女、川岸に足跡を残す赤い顔の河童―。岩手県遠野の古くから伝わる、不可思議な説話を集めた『遠野物語』。日本民俗学の黎明を告げた柳田國男の記念すべき名著を、京極夏彦がリミックス。深く読み解き、新たに結んだ。百年の時を隔てた二者の感性の邂逅は、新たな世界観を生み、読む者を見知らぬ境地へといざなう。静かな恐怖がにじり寄ってくる、比類なき怪異譚。
著者等紹介
京極夏彦[キョウゴクナツヒコ]
小説家、意匠家。1963年北海道生まれ。94年、妖怪小説『姑獲鳥の夏』で小説家デビュー。『魍魎の匣』で第49回日本推理作家協会賞、『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、『後巷説百物語』で第130回直木賞を受賞
柳田國男[ヤナギタクニオ]
民俗学者。1875年兵庫県生まれ。1900年、東京帝国大学法科大学卒。農商務省に入り、法制局参事官、貴族院書記官長などを歴任。35年、民間伝承の会(のちの日本民俗学会)を創始し、雑誌「民間伝承」を刊行、日本民俗学の独自の立場を確立。51年、文化勲章受章。62年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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そる
223
「遠野物語」を京極夏彦さんが口語文に直し構成を変え説明を加え「remix」したもの。「遠野物語」より格段に読みやすく遠野地区のノスタルジーも感じられました!河童、天狗、座敷童衆など妖怪話、祀ってる神様の話、ヤマハハ、マヨイガ、狐に化かされたような不思議な話や近所の噂話的なのまで怪しい話が色々。遠野地区もそうだけど自分の地元の民話とか昔からの行事や祭り、そういうのをもっと知りたくなった気分です。「その日以来ー遠野鄉の人は風が騒がしい日になると、「今日はサムトの婆が帰って来そうな日だな」と謂うそうである。」2019/03/18
りゅう☆
105
京極夏彦×柳田國男って共作?などと思うほど無知な状態で読み始めた。岩手県遠野市近辺にまつわる事実として語られた不思議な怪談物語。本文記載の地名を明治時代の遠野郷の地図で場所を確認しながら読む。娘がさらわれたり、狐に化かされたり、祟りにあったり、赤い顔の大男や化け物に会ったり、河童に騙されたり、河童の子を孕んだり、ヤマハハ(山姥)に殺されたり、白い鹿、山の姫神…。たくさんあり過ぎて1度読んだだけでは印象が残らないというのが正直な感想。確かに読みやすかったので、話を膨らましたストーリーなんかあると面白そう。2017/08/10
扉のこちら側
103
2016年507冊め。角川ソフィア文庫で初読、角川文庫で再読。昨年のカドフェス2015で対象となっていたのはソフィア文庫版だか、今年は角川文庫版という何とも商売上手な戦法だ。それにまたまた引っかかって、こうしてまた夜中に読んで後悔する羽目になる。日本昔話ではないのになあ。2016/07/02
優希
86
静かに鳥肌が立つ怪異譚でした。柳田邦男の『遠野物語』をもとに不可思議な説話をリミックスし、読みやすくしているように感じました。原作を深く読み、新たな世界へと昇華させる腕は流石としか言えません。新たで見知らぬ世界観に誘われる感覚は怖さもありますが、気持ち良くもありました。2018/08/19
ひかちゅう
65
沢山の短編の怪談が集められた作品。原作は柳田國男だが、京極夏彦の再編と解説によってだいぶ読みやすくなっているそうです。柳田邦男とは別人。遠野は住んでいるところからわりと近いところなのでよく行きますが、本書記載のとおり遠野三山と言われる早池峰山、六角牛山、石上山に囲まれた昔ながらの日本ののどかな田園風景が広がる素敵なところです。ちなみに遠野は蜩ノ記や真田丸の撮影場所にもなったそうで、時代劇の撮影現場としてよく利用されるとのこと。この本を読んで遠野に行くと、また違った新たな景色が見えてきそう。2016/11/16