出版社内容情報
夏目 漱石[ナツメ ソウセキ]
著・文・その他
内容説明
美しく聡明だが、我が強く、徳義心に欠ける藤尾には、亡き父が決めた許嫁・宗近がいた。しかし藤尾は宗近ではなく、天皇陛下から銀時計を下賜されるほどの俊才で詩人の小野に心を寄せていた。京都の恩師の娘で清楚な小夜子という許嫁がありながら、藤尾に惹かれる小野。藤尾の異母兄・甲野を思う宗近の妹・糸子。複雑に絡む6人の思いが錯綜するなか、小野が出した答えとは…。漱石文学の転換点となる初の悲劇作品。
著者等紹介
夏目漱石[ナツメソウセキ]
慶応3(1867)年、現在の新宿区生まれ。明治23(1890)年、帝国大学文科大学英文科に入学。明治28(1895)年から29(1896)年には『坊っちゃん』の舞台となった松山中学校で教鞭を執る。明治33(1900)年9月、イギリス留学出発。明治38(1905)年、『吾輩は猫である』を俳句雑誌「ホトトギス」に連載。明治40(1907)年、朝日新聞社に入社。以降、朝日新聞紙上に『三四郎』『それから』『こころ』などを連載。『明暗』が未完のまま、大正5(1916)年12月9日、胃潰瘍にて永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あーさん☆GWは墓参りをハシゴしました。暑くてバテました。
75
昭和43年37版。古過ぎて読み辛い(¯―¯٥)読み易いの探すべ('・ω・') 2020/03/18
扉のこちら側
69
2018年237冊め。再読。青空文庫で既読。新聞連載というのは後で知ったのだが、再読してみると物語自体は昼メロ的な雰囲気もあり大衆に好まれそうである。取り繕って打算的に生きる悲喜劇の末路。2018/06/30
優希
34
角川文庫で再読です。許嫁がありつつも、他の女性に心奪われる恋愛模様が美しく描かれていました。様々な想いが交錯するのが面白く、漱石の転換期に書くべきして書かれた物語だと思います。2023/10/27
RASCAL
18
小野、欽吾、宗近、藤尾、糸子、小夜子の男女6人の青春群像劇。恩師の娘を袖にして金持ちで美人の藤尾とくっつきたい小野。婚約者?の宗近と秀才の小野を手玉に取る藤尾。義理と人情の板挟みになった気弱な小野は、友人を使って一気に幕引きを図るが、宗近の鮮やかな説得に会い、自らの卑怯さに気づく。なにやら難しい欽吾や小野に比べ、宗近の行動力のなんとも爽やかなこと。クライマックスで藤尾の死という悲劇が待っているのだが、それがあまりに唐突。当時としては斬新な小説を書いていた漱石が実は保守的な心情の持ち主だったりする。2018/06/06
ホシ
17
前半はあまりページをめくる手が進まなかったが、後半は夢中になる。やはり、漱石の他作品と共通するものを私は感じた。つまり、私利私欲に走り、打算に満ちた、魂胆の知れない人間が、表面的には取り繕いながらいきる社会。そんな社会が辿る悲劇とも言える末路を描いた作品のような気がする。宗近の"真面目に生きよ"という言葉が何となく胸に響いた。その宗近は打算ではなく、こんな事を小野に言ったのだと信じたいけど....2017/09/19