内容説明
失踪した父の車が、長野県大町市で見つかった。その発見現場で息子の一成は深雪という地元女性と出会う。ある理由で一緒に父親の足取りを追う2人だったが、何者かにより妨害される。父にはこの地に秘密があったのだ。手がかりは「タケル」という名前と「カクネ里」という地名のみ。果たして、父は何者だったのか?早世後刊行された、大ヒットデビュー作『ファントム・ピークス』の著者が遺した、珠玉のサスペンス・ミステリ。
著者等紹介
北林一光[キタバヤシイッコウ]
1961年長野県生まれ。映画宣伝会社のプロデューサーを経て、執筆活動に入る。2005年『ファントム・ピークス』(応募時作品名「幻の山」)が第12回松本清張賞最終候補に。次回作を書き進める中、癌を発症しその才能を惜しまれつつ06年に他界。『ファントム・ピークス』は、友人たちの手によってその後、刊行された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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財布にジャック
88
ファントム・ピークスをだいぶ前に読んだ時もドキドキしたのですが、この作品もちょっとホラーテイストで怖いかなぁと思いました。山岳地帯が舞台なのですが、本当にその描写はリアルです。行方不明の父を探す息子に寄り添い読み進めましたが、辿り着いたその真実に愕然となりました。ファントム・ピークスよりもこちらの方が個人的にはずっと好みです。著者は6年程前に亡くなられたそうなので、もう北林さんの書かれた作品が読めないなんて、神様って残酷ですよね。2012/08/08
ntahima
79
実は異郷や異人をテーマにした話が結構好みである。桃源郷、隠れ里、迷い家。そして山人、山窩、道々の輩等。舞台が北アルプスの鹿島川源流部に実在する平家の落人伝説の地カクネ里と知り、かなりの期待をもって読み始めるが残念ながら舞台がカクネ里でなければならない必然性が余り感じられなかった。しかも主人公達が重装備で艱難辛苦の末、やっと辿りついた渓谷の秘境に、いくら地元民とは言え何人もが軽装で上がって来るのに違和感を覚える。ホラーは嫌いじゃないがホラーにはホラーの文法がある。ミステリなのかホラーなのか中途半端な読後感。2012/09/02
うしこ@灯れ松明の火(文庫フリークさんに賛同)
77
必要に迫られた時以外、特に話しをすることはない。父と息子の関係なんてそんなものだと思っていた。父が失踪するまでは。ある日失踪した父の車が長野県の大町市内で見つかったと警察から連絡があり、一人現地に向かった一成でしたが・・。「ファントム・ピークス」を読んだ時も思ったのですが、読みながら一つ一つの情景が目に浮かんでくるようでした。自然の厳しさ、そして業の深さを痛感させるお話でした。読了後は両親が生まれ育った田舎に行ってみたくなりました。それにしても著者が亡くなられた事が惜しまれます。★★★★2012/12/24
ma-bo
75
北林さんの遺された3作全部読み終えました。失踪した父親の車が長野県の山中で見つかった。息子が父の足取りを調べていくと縁のゆかりもないと思われた地域で、父の隠された過去や因縁が明らかになっていく…読み応えはありましたが、3作のなかでは1作目のファントム・ピークスが一番面白かったかなぁ。2021/10/20
mr.lupin
74
以前に読んだ『ファントム・ピークス』同様に自然の描写が素晴らしい作品でした。失踪した父親の足取りを追う息子の一成と現地で知り合った深雪。『タケル』とは一体何者?『カクネ里』には一体何が隠されていたのか? 最後が少しオカルト的な終わり方だったけど十分な読み応えでした。作者が早逝だけに新しい作品をもう読むことができなくて残念です。☆☆☆☆☆2018/05/07