内容説明
安政7年、条約批准のため遣米使節団が江戸湾を出航した。勝海舟が艦長を務める「咸臨丸」には、瀬戸内の塩飽衆・吉松たち日本人水夫が乗り組むが、悪天候に悩まされ、病気も蔓延する。アメリカ人水夫との対立、士官・中浜万次郎への反発など不穏な空気の中、果敢に太平洋横断に挑んだ彼らを思わぬ運命が待ち受けていた。書き下ろし後日譚「咸臨丸のかたりべ」を併載し、第27回歴史文学賞受賞作品が大幅改稿を経て、待望の文庫化。
著者等紹介
植松三十里[ウエマツミドリ]
1954年生まれ。静岡県出身。東京女子大学史学科卒業後、出版社勤務を経て、7年間アメリカに暮らす。2003年、「桑港にて」で第27回歴史文学賞を受賞し、以後、歴史・時代小説の書き手として注目を集める。09年『群青 日本海軍の礎を築いた男』で第28回新田次郎文学賞を、『彫残二人』で第15回中山義秀文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しんごろ
152
安静7年、サンフランシスコに向けて出向した咸臨丸。目的は日米修好通商条約の批准書交換。艦長は勝海舟。ジョン万次郎等も乗船しているが、日本人水夫にスポットを当てた物語。サンフランシスコまでの航海中は、悪天候に悩まされ、病気まで蔓延し船上だけにまさに戦場。それでも水夫達は頑張る。歴史の中に埋もれた水夫達の熱さが、臨場感があり良かった。吉松の行動が格好いい。そして、物語はもうひとつあり後日譚の物語。咸臨丸に魅入られた文倉平次郎。生涯をほぼ咸臨丸に捧げる平次郎の生き様も渋くて格好いい。【読んだ本登録1100冊目】2023/04/30
はらぺこ
32
咸臨丸が苦難を乗り越えて太平洋横断する話を期待したが、メインはサンフランシスコについてからの話やったので少々肩透かしを喰らった。併載の『咸臨丸のかたりべ』の方が好きやけど、吉松のその後か子供の登場を期待してしまったのでこちらも少し肩透かしになってしまいました。2017/03/21
Hong Kong
23
読みともしんごろさんのご紹介にて。ありがとうございます~。面白かった〜。勝海舟、福沢諭吉などは、名前だけ?登場してもちょっとだけ。まるごと水夫たちの話。乗船中の苦労、ついてから、サンフランシスコの病院に入院してしまったらもう日本へは帰れないのではないかという恐怖。後日譚になる、書き下ろし短編、咸臨丸のかたりべ⇛文倉平次郎の小伝も入っていてとても良い。2023/06/22
ゆずこまめ
7
期待せずに読んだけど、これおもしろいです。幕末の時代にアメリカに行くというのは大変なことで、歴史に名を残した人もそうでない人も、みんな苦労をしたんだなーと実感。こういう実感って教科書ではわかないですよね。難しいことは置いといて、登場人物がみんなかっこよくていいです。男も女も!2011/12/20
韓信
5
日米通商条約批准のために渡米した幕府海軍の咸臨丸。その水夫たちの視点から、渡航とサンフランシスコ滞在を描く異色の歴史小説。現地で病死する者、女に現を抜かす者、病に倒れて置き去りにされる者等々、時代考証に裏打ちされたディティールと人物の描き分けの巧さで、それぞれの悲哀や郷愁、そして徐々に固まる残留組の結束を描いて感動的な佳作。第27回歴史文学賞受賞作の改稿版。併録の「咸臨丸のかたりべ」は『幕末軍艦咸臨丸』の著者である文倉平次郎の生涯をかけた仕事を描く、表題作の後日譚。久しぶりに本を読んで泣いてしまった。2014/06/19
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- 和書
- アジア辺境紀行 徳間文庫