内容説明
岩手県にある鷲尻村。長く無医村状態が続いた当地に、待望の医師が赴任した。その直後、彼は何者かに襲われ帰らぬ人となった。巨熊に襲われたと噂される彼の代わりに新たに赴任した滝本。だが、着任早々、彼は連続殺人事件に遭遇することになる。先祖の祟りに縛られたこの地で、彼らを襲うのは熊なのか、それとも―?横溝正史ミステリ大賞を受賞し、21世紀の横溝正史が誕生と各方面から絶賛されたデビュー作、待望の文庫化。
著者等紹介
大村友貴美[オオムラユキミ]
1965年岩手県生まれ。中央大学文学部卒業。2007年、本作で第27回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、作家デビュー。現代的な問題を抱えた地方社会を舞台に横溝世界を甦らせたと絶賛される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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toshi
72
2007年のデビュー作で、横溝正史ミステリ大賞受賞作。岩手県の雪深い寒村で連続殺人事件が発生し、住民達を恐怖に陥れます。それと同じくして赤熊と言われる巨大グマが出現し、人々を襲います。物語は殺人事件とクマの対決が並行して起こり、ストーリーを重厚にさせています。21世紀の横溝正史の渾名は伊達ではなく、細部をきっちり積み立てて証拠を詰める手法には舌を巻きました。(と言うより私は横溝作品は「獄門島」しか読んだことがないので、今度はもっと読んでみたいと思います)。藤田警部補を主役にした続編も出ているようです。2025/05/26
うしこ@灯れ松明の火(文庫フリークさんに賛同)
64
雪に閉ざされた鷲尻村に4カ月間だけという約束で医師として赴任することになった滝本。その村では少し前に前任の医師が転落死しており・・。第27回横溝正史ミステリ大賞受賞作。殺人シリーズ第1弾。熊は襲ってくるは、殺人事件は起きるはと何かと盛りだくさんの1冊でした。どうしても赤熊の襲撃に目が行きがちで殺人事件など二の次といった感じでしたが、動機は別として無事解決して良かったです。ただ何ともやりきれない気持ちにはなりましたが。シリーズ第2弾も読もうと思います。★★★2013/01/12
HANA
56
横溝正史賞受賞作。といわけでもなかろうが、岩手の寒村が舞台のミステリ。過疎、高齢化といった現代の村に共通する問題が前面に出てきており、事件の陰惨さよりそっちで気分が重くなる気がする。横溝の凄さはそういう社会と土俗が高度なレベルで融合していたのに、改めて気付かされたかな。あとラストが唐突な気がする。最後の一章で急に畳み掛けたような印象だし、動機が薄すぎてそちらから犯人を推測するのは不可能に近い。あるものに関してはまさかと思ったトリックがそのまま使われているし……。題材自体は面白いので、ちょっと残念であった。2017/04/14
ntahima
44
高校生の頃、映画化をきっかけとした第一次横溝正史リバイバルがあった。猟奇的な表紙絵付きの黒本が田舎書店の棚を席巻する姿は壮観であり異様でもあった。級友には全作読み切った猛者も居た。21世紀の横溝正史と呼ばれる著者。状況設定は確かに似ているし、東京者の若い医者が異界とも言える岩手の山間僻村に感じる得体の知れない違和感がよく表現されている。硝子窓を通して覗き見る様な不安定な距離感。書評では厳しい評価も見られるが、一種の様式美、書割の前で演じられる舞台劇と看做せば楽しめる。ところで赤熊は何の為に出て来たのやら。2012/09/15
はらぺこ
34
主な登場人物のページに書かれてる人達が死にまくるから犯人を絞らせないように書かれてるので、第十章で犯行の経緯が纏めて語られると正直読むのが面倒臭かった。2015/04/18