内容説明
“火の山”への旅から戻った妖鬼の皐月と魂追いの少年縁は、再び村で暮らし始めるが、縁は行く先も告げず、ふらりと遠出することが多くなった。あることがきっかけで、一緒に暮らすことになった河童の子ネネは、なぜか皐月に反発ばかり。周囲では妖絡みの事件も発生し、皐月の日常は気苦労が絶えない。そんな中、縁には、旅先で邂逅した川の主との“約束の時”が刻一刻と迫っていた……。県境を守る鬼の少女の物語、最終章。
著者等紹介
田辺青蛙[タナベセイア]
1982年大阪府生まれ。オークランド工科大学卒業。2006年、第4回ビーケーワン怪談大賞で佳作となり、『てのひら怪談』に短編が収録される。08年、第15回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
37
三部作最終巻。全然悪くはないんだけど、なんかすごく寂しい小説。寂しい中に希望はあるにはあるのだけど。(縁君がそこまで大事な存在というのが、腑に落ちないと言うか、、、皐月の妖しとしての寂しさ、例えばそんなに人とは交われずに、身体も大きくならないのに周りがかわってしまうとかというそんな寂しさが、縁君と出会うことで増幅してしまった感じがします。)2024/12/01
kishikan
26
妖鬼、皐月シリーズの最終作。生き屏風以来、怪しさと不思議さ、そして可愛らしさまで垣間見せる、田辺流のホラーに魅せられてきた。特に、魂追いの少年「縁」や馬の中で眠る鬼の少女?「皐月」という印象深いキャラクターと読後にほのかな優しさを感じさせるストーリーが際立っている。全体として、本作はやや展開に行き詰まりを感じる。しかし、前作に定められた「別れ」の時の到来、皐月と河童の子ネネとの彼を探す旅、そして二人は今の世でも探し続けている、という終わり方は素敵だった。追伸)紫陽花を植えていくアメフラシの話が印象的!2011/06/06
miyukorori
17
“火の山”から戻った皐月と縁は再び村で暮らし始める。卵から孵った河童の子ネネとも暮らすことになったが、我侭なネネに皐月は苦労していた。そんな中、川の主との約束の時が縁に迫っていた―。皐月シリーズの最終章。変わらない妖と、変わりゆく人間との違いが切なかった。人間が変わってしまっただけで、きっと妖怪達はまだそこにいるんだろうなと思った。これでこのシリーズは終わりだけど、きっと皐月達の旅はまだまだ続いていくんだと思う。その先に光があることを祈って☆2011/05/08
miroku
15
シリーズ最終話・・・、淋しいですね。ずっと読んでいたかった。でも、皐月の旅は今も続いている。ネバーエンディング・ストーリーに乾杯!2011/07/17
眠る山猫屋
15
三部作の終了。なんだろう、このあやふやな寂しさは。ほのかにまといつくような、そんな切なさが登場人物たちから伝わってくる。 村の境界を守る皐月という名の妖鬼も、河童のネネや魂追いの少年・縁と生活していく上で、苦労を重ねながら、まるで人間の家族のような感覚に悩まされていて…そんな皐月たちに忍び寄る別れの予感。 妖鬼らしく、諦めない。そんな時間を味方につけた皐月たちの姿が切ないけれど、それでも、爽やかな幕切れだった。2011/06/12