内容説明
ダム建設現場で働く男がセメント樽の中から見つけたのは、セメント会社で働いているという女工からの手紙だった。そこに書かれていた悲痛な叫びとは…。かつて教科書にも登場した伝説的な衝撃の表題作「セメント樽の中の手紙」をはじめ、『蟹工船』の小林多喜二を驚嘆させ大きな影響を与えた「淫売婦」など、昭和初期、多喜二と共にプロレタリア文学を主導した葉山嘉樹の作品計8編を収録。ワーキングプア文学の原点がここにある。
著者等紹介
葉山嘉樹[ハヤマヨシキ]
明治27(1894)年3月12日、福岡県京都郡豊津村(現・みやこ町)生まれ。早稲田大学高等予科文科除籍。貨物船の水夫見習い、鉄道局の臨時雇い、名古屋セメント会社の工務係などを経て、名古屋新聞記者となり、労働運動を指導。大正12(1923)年、名古屋共産党事件で検挙される。獄中で執筆した「淫売婦」で注目を集め、「海に生くる人々」でプロレタリア作家としての地位を築く。小林多喜二にも大きな影響を与え、「戦旗」派の小林とともに、「文芸戦線」派を代表する作家として日本プロレタリア文学の双璧をなした。左翼運動への弾圧が激しくなる中、経済的に困窮し、長野県、ついで岐阜県へ移住。さらに満蒙開拓団運動に関わり自身も渡満するが、昭和20(1945)年10月18日、敗戦による帰国の車中、ハルビン南方の徳恵駅(現・中国吉林省)手前で死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひろちゃん
72
若干怖い。訴えかけるものがある。2016/01/11
こばまり
57
ひぃぃぃぃぃ。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいと誰彼構わず許しを請いたくなる。特に「セメント樽の中の手紙」と「淫売婦」の恐ろしさよ。作家の人生も重なって。裏表紙にはワーキングプア文学との惹句があるがプロレタリアとするよりも多くの読者を獲得しそうだ。2016/05/20
鷺@みんさー
35
教科書に載っていたりして、知ってる人も多いと思うこの作品、プロレタリア文学というより、怪奇小説(ホラー、ではなく怪奇小説)として読んだ。ゾッとしたあの瞬間が忘れられず。表題作はとても短いのに本当に恐ろしいので、時々読み返す。手紙の女性に共感する部分もあり、切ない怖さをしみじみと味わえる。好きだ。
逢沢伊月
29
悲惨な現実を知ることになっても たまたまだとか、それが普通だとか、自分はまだましだとかいう思いが心のどこかで自分自身を縛りつけて これまでの生活から抜け出そうと何かを変えようと行動に移すということが出来ないのは、今も昔も変わらないのかもしれない2024/05/01
neimu
28
言わずと知れたプロレタリア文学の作品、教科書に良く出てくる。何だか表紙を見ているだけで、暗い気分に襲われる。でも、まあ、今の世の中の労働状況も「あなたもお気を付けなさいませ」と実際あんまり変わらない。そういう風に読むと、時代が変わっても労働者の状況は変わらないんだなと実感させられる。明日は我が身かと。