内容説明
陸軍中野学校は日米開戦前夜の昭和13年、諜報員を養成する目的でつくられた。卒業生たちは、大陸や東南アジアで諜報活動に従事したが、終戦とともに組織は解体される。しかし、戦後、卒業生たちが歩んだ道は、決して平坦なものではなかった。GHQ潜入工作、皇統護持計画、そして下山事件―関係者たちの肉声を集め、昭和史の裏側に光を当てるノンフィクション。
目次
序章 秘密戦士たちの留魂祭
第1章 陸軍中野学校とは
第2章 知られざる中野学校秘話
第3章 “戦犯”となった卒業生とGHQ潜入工作
第4章 下山事件との関わり
第5章 幻の教材発掘
第6章 陸軍中野学校と戦後諜報機関
第7章 「最後の抑留者」の証言
終章 陸軍中野学校の戦後を追って
追補 皇統護持本丸作戦
著者等紹介
斎藤充功[サイトウミチノリ]
1941年、東京生まれ。ノンフィクション作家。東北大学工学部中退(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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東京には空がないというけれど・・・
7
本で紹介されているのは、①戦後にGHQに潜入していた卒業生、②国鉄の下山総裁事件との関わり、③三島由紀夫事件との関係、④中国に残留し家族を持ち最後は中国政府に逮捕された人物(実は憲兵)ー中国原爆成功情報ー内閣情報調査室との関係、など。実は、この本を読み始めたのは、福岡の西部軍が引き起こした「油山事件」について知りたかったため。読んでいくと、他の①~④の方がインパクトが強かった。中野学校の教育方針「黙して語らず」の言葉通り、全てが未だ「謎」のままであることがわかった。肉薄しつつも霧の中で終わった感あり。2024/08/14
seekingtruth105
2
戦後60年の時に、陸軍中野学校卒業生の戦後史を取材したもの。印象的だったのが、戦時中は上官から生きて帰ってくるように命令されたこと。戦死が英雄視される特攻隊とは違い、軍が情報を得るために生還が大前提であり、戦中戦後も素性を秘匿したまま生きることを余儀なくされた。特攻隊にしても、諜報員にしても、人間が戦争の具にされていると感じ、切なかった。2022/05/29
うたまる
2
「国家間の闘争は単に武力に依るのみならず政治、経済、思想等所謂総力戦の全部門に亘り行わるるものにして、従って国家闘争の裏面的行為たる謀略も又之ら諸部門に亘り実施せらるるものなり」……未だ謎の部分が多い陸軍中野学校について、卒業生たちへのインタビューを基に構成したノンフィクション。神戸事件や本丸作戦など、その荒唐無稽ぶりお粗末ぶりに一驚し、逆にGHQ潜入や自衛隊調査学校への引継ぎに快哉を叫ぶ。惜しむらくは、個々の戦後史と中野学校の全体像との仕分けが効いていないところ。どっちつかずになってしまっていて残念。2015/05/22
だいき
1
陸軍中野学校を卒業した人たちがどのような戦後史を辿ったのか筆者の取材を元に記述されている。戦時中の生々しい記述や、三島由紀夫との関連などについても書かれている。月並みだけど平和であることが一番だと痛感した。2022/01/10
ポッチ
1
陸軍中野学校の戦後に重点を置いたノンフィクション。下山事件にウホッとなったが、期待していたことは明らかにされず。多くが結局闇の中のままだが、そのこと自体が興味深かった。2008/11/23