出版社内容情報
昔の男が現れた。場違いなほど美しく、いかがわしい車に乗って。ゆうこのもとをかつての男が訪れる。久しぶりの再会になんの感慨も湧かないゆうこだが、男の乗ってきたクルマに目を奪われてしまう。以来、男は毎回エキゾチックなクルマで現れるのだが――。珠玉の七篇。
絲山 秋子[イトヤマ アキコ]
著・文・その他
内容説明
昔の男はオレンジ色のTVRタスカンに乗って現れた。会いたくなんかなかった。ただどうしてもその車が見たかった。以来、男は次から次へと新しい車に乗ってやってくるようになった。ジャガー、クライスラー、サーブ、アストンマーティン、アルファロメオ…。長い不在を経て唐突に始まった奇妙で不確かな関係の行き着く先は。勤め人時代を描いたエッセイ及び掌編小説「ダイナモ」併録。
著者等紹介
絲山秋子[イトヤマアキコ]
1966年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。メーカーに入社し、2001年まで営業職として勤務する。03年、『イッツ・オンリー・トーク』で文學界新人賞を受賞。同年発表の短編『袋小路の男』で04年に川端康成文学賞、05年『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、06年『沖で待つ』で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
215
車をめぐるショート・ストーリーからなる連作小説。「私」の前に、以前自分のもとを去って行った恋人が高級車でとっかえひっかえ現れるといったお話。プロットはちゃんとあるものの、小説の中心となるのは、ひたすらに車。いわゆるスーパー・カーではないものの、ちょっと手が届きそうにないような外車だ。TVR Tuscan,Jaguar XJ8、etc…。それにしても、絲山秋子さんの車好き、そしてとっても車に詳しいことには脱帽。自分が乗れそうな車を想像してみたら、本書の中では、主人公と同じアルファ145くらいしかなかった。2015/02/23
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
80
クルマ、それも一筋縄ではいかない外車を小道具にした連作小説+スピンオフ+エッセイ。アルファロメオ145に乗る〈私〉をドライブに誘うため、昔の男は毎回クルマを買い換えて現れる。TVR、ジャガー、クライスラー、サーブ、アストンマーチン、そしてアルファ。クルマに熱中している間は〈子ども〉でいられる。現実を先送りにしておける。いつまでもそうしていたかったけど、どうやら、そうもいかない。クルマを降りて地下鉄に乗る。どこへ行こう。どこでもいいのだ……。小説の後のエッセイもすごく良かった。愛車との別れは切ないよなあ。2015/03/18
おくちゃん👶柳緑花紅
70
車に詳しければもっと楽しめたはず。主人公は男前でちょっとダメな素敵な女性。車には詳しくないけれど、運転する男性を助手席から見るのは好き♡車を丁寧に育てる男はもっと好き♪2015/06/28
masa
59
車との恋愛小説。タスカンのガサツなエンジン音を「四時間くらいゲーセンにいるような気分」、ジャガーのカーナビを「社長室にガキがオモチャを忘れていった、みたいな景色」、カブリオレを「断る理由がうまく見つからなくてつきあってしまった男」、比喩がいちいちカッコいい。そう、著者の描く女性はカッコいい。女であることを誇っている。女は損で不平等だと語りたがる風潮にカウンターをあてるように女の方が面白いのだと思わせる。車はあくまでも快適に暮らす道具。だけど好きなんだ、いいだろ?車との恋愛では誰もが、ふる側の哀しみを知る。2021/10/23
なゆ
47
絲山さんって、車すごい好きなんだな~と実感する一冊。昔の彼氏が毎回違った外車に乗ってくる連作短編集かな。友情のようでそうでもなく、やけぼっくいに火??とか思わせつつ。それよりも、車にこだわる2人のその車のフォルムとか乗り心地とかの語りっぷりが楽しい。クセのあるクルマほど、熱く語ってるところとか。そう車に興味のない私も、楽しく読めた。オートマくさいMT車とか、神経を逆なでするようなばかばかしい機能とか、言いたい放題言ってくれて小気味いい。そう、私も常々、車はどんどんつまらなくなっていくと思ってるので。2014/12/13