内容説明
人里離れた山中の別荘で、私は最愛の妻・由伊とふたりで過ごしていた。妖精のように可憐で、愛らしかった由伊。しかし今はもう、私が話しかけても由伊は返事をしない。物云わぬ妻の身体を前にして、私はひたすらに待ちつづけている。由伊の祝福された身体に起こる奇跡―由伊の「再生」を(「再生」)。繊細で美しい七つの物語。怪奇と幻想をこよなく愛する著者が一編一編、魂をこめて綴った珠玉の作品集。
著者等紹介
綾辻行人[アヤツジユキト]
1960年京都府生まれ。京都大学教育学部卒業、同大学院博士後期課程修了。87年に『十角館の殺人』で作家デビュー。これを引き金に巻き起こった「新本格ムーヴメント」は、推理小説界の一大潮流となった。92年には『時計館の殺人』で第45回日本推理作家協会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobby
136
やっぱり伝承の怪談よりも創造の奇譚の方が好き(笑)7つの短篇いずれにも「由伊」という女性が登場するが明らかに相関はみられない。それでいて各篇どれもグロさエグさはなかなかに生々しい…とにかく先が気になる展開にゾクゾク惹き込まれ、行き着く捻りやオチにまたゾッとする!最もお気に入りは既読の「再生」奇怪から感じる愛や嫉妬に感情揺さぶられた末の変化球お見事!逆に口腔にまつわる残虐が強烈な「眼球奇譚」は苦手…いや、当分の間は飲料を口にするのを躊躇しそう…「特別料理」はコミカルに読めたので何とか…〈ランクA〉はビンゴ♬2022/04/13
佐々陽太朗(K.Tsubota)
122
読むきっかけになったのはスタンリィ・エリン氏の小説『特別料理』を読んだこと。本書に収められた短編「特別料理」がスタンリィ・エリン氏へのオマージュとして書かれたものと知って読みたくなったのである。ひと言でいえば「悪夢」です。私の心の中にある悪魔が見させた悪夢。読みたくないのに読みたい。やめよう、もうやめようと思いながら続きを読んでしまう。そうした類いの小説集。ただ単にホラーであるというだけでなく、読者に謎を提示しておいて意外性のある結末で終わるというミステリの手法を用いている。そのあたりは流石と唸らされる。2018/09/14
ダイ@2019.11.2~一時休止
118
由伊がカギを握るホラー短編集。呼子池の怪魚・特別料理なんかがイイ。2013/11/25
takaC
110
作品としては16年ぶりの再読でしたが全く問題なし。古典枠入りはまだまだ先でしょう。2014/03/13
おかむー
94
お気に入りさんの感想につられて怖いモノ見たさでチャレンジ。ただ怖い、グロいだけではない、インモラルゆえの吸引力はハンパなく、いろんな意味で満足な作品でした。『よくできました』。しかし「バースデー・プレゼント」を読みながら昼飯をもぐもぐ食せる俺ってそこそこ図太いね。7編の短編のなかでもやはり最も強烈なのは「特別料理」なのだけれど、逆に一線を越えているおかげか、筆がノってる感、文章が走ってる感がすごい(笑)。でも他の強烈さのために見逃しかねない「人形」が意外と印象に強いのは我ながら不思議。2014/03/18