内容説明
妻が妊娠をかくしたまま自殺した。ショックで隠遁生活を送る秋山に、元上司から奇妙な依頼が来た。「一晩で500万、カジノで負けてくれ。」その日から、妻に似た謎の美女、やくざ、闇社会の大物などが現れ、執拗に付けまわされる。謎を解く鍵は、ゴッホの名画「ひまわり」だった―。直木賞・乱歩賞受賞第1作。名作『テロリストのパラソル』に並ぶ、疾走感溢れる展開と緻密な構成が秀逸なミステリの傑作。
著者等紹介
藤原伊織[フジワライオリ]
1948年、大阪府に生まれる。東京大学文学部仏文科卒業。広告代理店に勤務する傍ら、執筆を始める。85年「ダックスフントのワープ」で第9回すばる文学賞を受賞。95年、『テロリストのパラソル』で第41回江戸川乱歩賞を受賞。『テロリストのパラソル』は翌年、第114回直木賞も受賞した。2007年、食道癌のため59歳で永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tu-bo@散歩カメラ修行中
33
図書館本。藤原伊織さん読書週間。一気に読ませる登場人物達の造形、文体、構成。面白く読みました。 画家の夢を早々にあきらめたやり手のアートディレクター、その妻の謎の死、ゴッホの8枚目のひまわり テロリストのパラソルの次に書かれた作品です。若干ミステリーとして破綻しているような印象があります。細部を読み込みます。でも読んで損はない というより面白い。<( _ _ )>2018/02/20
まめこ
8
★★★★☆センスと品のよい文章の藤原伊織作品。ストーリーテラーの主人公がなんせ無気力なひねくれ者なだけに自発的に動かない(笑)。優美な魅力を放つ原田や炸裂的な新聞配達のお兄ちゃん、熱量の高い麻里ちゃんがせっついてやっと動いた!かと思うと、そこはやはりひねくれ者。この主人公だからこその後始末(笑)。主人公の奥さんの自殺から芋づる式に手繰られるファン・ゴッホ8枚目のひまわり。2018/02/10
天笑院たか姫
7
妻が妊娠を隠して自殺した。ショックで隠遁生活を送る秋山秋二に元上司から「一晩でカジノで500万を負けてくれ。」と懇願される。カジノに行った日から、妻似の美女、やくざ、裏社会の者等が秋山の周りを動き始める。謎を解くのは、8枚目?のファン・ゴッホの絵だった。『テロリストのパラソル』も主人公にふたりの協力者がいて、覇気のない主人公が魅力満載でした。妻は自殺しないで、打ち明けたらと思ってしまう。きれたヤクザが怖かった。2016/02/02
sken
6
あ”ぁぁ……。やっぱりこの作家さんはハードだなぁ。例によってトラウマ抱えたオッサンが妙な事態に巻き込まれる藤原節ですが、登場するどの人物にも厚みがあって、息づかいまで聞こえてきそうです。今回の主人公は酒は飲まぬがドーナッツとかポッキーを主食にミルクを飲むという悪癖で、その部分には全く感情移入ができなかったんですが、登場する女性が魅力的でしたぃ。読み終わってからの虚脱感というか、なんというかは格別なモノがありました。ワシだったら……とか、いろんなことを考えさせられましたぃ。2013/02/21
Yoichi Taguchi
5
藤原伊織小説にこんなに重いラストがあるのかというのが率直な読後感。短く洒脱な会話、ストーリー展開や意外性は十分に楽しめた。一見覇気をなくした中年(といっても30代後半の設定)が、うら若き乙女の気を引くのは藤原小説の定番。やはり藤原伊織氏には、ハードボイルドが良く似合う。2018/10/13