内容説明
四国から東京に戻った「おれ」―坊っちゃんは元同僚の山嵐と再会し、教頭の赤シャツが自殺したことを知らされる。無人島“ターナー島”で首を吊ったらしいのだが、山嵐は「誰かに殺されたのでは」と疑っている。坊っちゃんはその死の真相を探るため、四国を再訪する。調査を始めたふたりを待つ驚愕の事実とは?『坊っちゃん』の裏に浮かび上がるもう一つの物語。名品パスティーシュにして傑作ミステリー。
著者等紹介
柳広司[ヤナギコウジ]
1967年生まれ。2001年『黄金の灰』でデビュー。同年『贋作「坊っちゃん」殺人事件』で第12回朝日新人文学賞を受賞。09年『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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TERU’S本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
105
柳氏のデビュー作。夏目漱石『坊ちゃん』を背景とし、赤シャツやうらなり達の行動には坊ちゃんの目にうつるものとは違う理由があったとしてミステリを仕上げている。登場人物らは間違いなく『坊ちゃん』の設定の通りだが、坊ちゃんが頭がキレない人物として描かれているのに違和感を持つ。幻覚も含め、まるで京極堂の世界であり、坊ちゃんは関口くんである。清をこういう風に利用しないで欲しいと、お清を大切に思うものとしては言っておきたい。2023/09/19
射手座の天使あきちゃん
98
「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。」書き出しを憶えるほどの名作を嗚呼なんたること! しかし文体の模倣はお見事、漱石先生もあの世で苦笑いですぞ!!(笑) 本編から3年後、「山嵐」と「坊ちゃん」の再会に始まり、「赤シャツ」の自殺(殺人)の真相究明をかなりムリ筋で書いてます(笑) 一読の価値ありですよん♪2012/04/21
財布にジャック
83
あの有名な「坊っちゃん」を、ここまで異解釈して、殺人事件にしちゃうなんてと読み始めるまでは不安でした。しかし、柳さん流石です!坊っちゃんは勿論、山嵐、赤シャツ、野だいこ、うらなり、マドンナがあんなことやこんなことも~な凄い展開になっちゃって、時代背景もしっかり踏まえられていて、とっても楽しめました。柳さんの夏目さんに対する思い入れがぎっしり詰まった良い作品でした。2010/12/06
hit4papa
80
夏目漱石『坊ちゃん』のその後を描いた、何と!ミステリです。オマージュと言っても良いでしょう。本作品を読んで、慌てて『坊ちゃん』を読み返した次第です。それ程、巧に本家の世界観をなぞっているのです。本家を再読したくなるくらいに優れています。教職を辞し東京に戻ったおれが、赤シャツの死の真相を探るべく山嵐とともに再び四国へ。冒頭から、ぐっとくるじゃありませんか!坊ちゃんが名探偵さながらに、赤シャツ事件の謎を解くという展開です。本作品は、本家のエピソードに違う意味を与え、真相を解明していきます。う~ん、凝っている。2020/10/19
クプクプ
76
私は夏目漱石の「坊っちゃん」をすでに読んでいました。「坊っちゃん」自体が、割と難しい作品なので、柳広司の今回の読書で、理解が深まり楽しかったです。柳広司は、精神病院にも興味を持っているようです。私はミステリーを読み慣れていないのでオチはよくわかりませんでしたが、松山の温泉の賑やかさを書いたページは、胸が躍りました。私は今年のお盆に旅行へ行けませんでしたが、今回の読書で、四国へ旅行したような気分が味わえました。また、明治という時代背景や、政治のことも書かれ柳広司は社会派だという印象を持ちました。2023/08/17
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