内容説明
1945年8月、砂漠の町ロスアラモス。原爆を開発するために天才科学者が集められた町で、終戦を祝うパーティが盛大に催されていた。しかしその夜、一人の男が撲殺され死体として発見される。原爆の開発責任者、オッペンハイマーは、友人の科学者イザドア・ラビに事件の調査を依頼する。調査の果てにラビが覗き込んだ闇と狂気とは。ミステリー界最注目の気鋭の代表作、待望の文庫化。
著者等紹介
柳広司[ヤナギコウジ]
1967年三重県生まれ。2001年『黄金の灰』でデビュー、同年『贋作「坊っちゃん」殺人事件』で第12回朝日新人文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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財布にジャック
92
原爆を作った人間、原爆投下のスイッチを押した人間、実際にいるんですよね。そう思うと小説とはいえ、読み進めるのが辛くて苦しくなってしまいました。なんとか最後まで読みましたが、ミステリーとしての謎解きも上の空で、怖さで頭がいっぱいになってしまいました。正気と狂気って紙一重なんですね。2010/11/30
ehirano1
85
サイエンス:ホラー:サスペンス:ミステリー=1:3:5:1といった感じでした。しかし「黙示録」の項には当方の方が“もうやめてくれ!”と言いそうになりました。重かったです・・・。2016/10/10
クプクプ
75
私は今まで、原爆を落とされた日本の側で戦争を見ていましたが、この作品は原爆を落とした側のアメリカの話。ある外国人が柳広司に原稿を渡し、柳広司が翻訳したという設定。半藤一利「日本のいちばん長い日」を読んだ後だったので、時代背景は想像できました。また、日本人作家が外国人の登場人物を描くと言う点では、北杜夫「夜と霧の隅で」にテイストが似ていました。総合的に判断すると、色気もなく、単調だった印象。オッペンハイマーのことが描きたかったのだと思いますが。私も祖父が被爆はしていませんが広島出身なので、他人事ではないです2023/09/18
MURAMASA
62
本作はあくまでミステリではありますが、原爆をテーマに扱っていることもあってか、犯人捜しやトリックというミステリでいえば「本筋」にあたる内容よりも、原爆投下に至る、または原爆投下後の科学者たちの心の在り方の描写の方に、私は惹きつけられました。ジョーカーシリーズといい、柳さんの作品はシチュエーションが物語の枠組みだけでなく、テーマに深く関わってくるように思いました。こうの史代さんの『夕凪の街 桜の国』『この世界の片隅に』などの作品と合わせて読むと、テーマについてより深く考えられるのではないかな。2010/12/19
Nobu A
53
柳広司著書3冊目。前書「風神雷神」上下巻読了後、著者の著作をもう少し読みたく選書。一度は上映予定がなかった映画「オッペンハイマー」封切り前の予習に。科学者オッペンハイマーと将校レズリー・グロービスを中心に史実を基に現実と幻想の世界を構築。読了後まず思ったのが著者はなぜ本作を執筆したのか。参考文献欄に「翻訳した」と明記。広島原爆後の惨状等、目を覆いたくなるような描写があり、日本人には様々なことを考えさせられるテーマ。比較的淡々と物語が終始展開する印象。独自性と言うか柳広司の明確なメッセージが見えなかった。2024/03/10
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