内容説明
江戸時代、ある晴天の日、街道沿いの茶店に腰かけていた浪人は、そこにいた、盲目の娘を連れた巡礼の老人を、抜く手も見せずに太刀を振りかざし、ずば、と切り捨てた。居合わせた藩士に理由を問われたその浪人・掛十之進は、かの老人が「腹ふり党」の一員であり、この土地に恐るべき災厄をもたらすに違いないから事前にそれを防止した、と言うのだった…。圧倒的な才能で描かれる諧謔と風刺に満ちた傑作時代小説。
著者等紹介
町田康[マチダコウ]
1962年、大阪府生まれ。高校時代より音楽活動を始め、INUを結成。81年、アルバム『メシ喰うな!』でデビュー。96年に発表した処女小説『くっすん大黒』でドゥマゴ文学賞、野間文芸新人賞を受賞。2000年『きれぎれ』で芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mae.dat
250
「いってんじゃねぇよ。ぶっ殺す」と言って草をちぎって立ち上がった。江戸時代の文化、風習のまま現代迄進んだ様な世界観。だから外来語を用いたり、芥川龍之介、夏目漱石なんかの作品に、共通認識として触れていても良いのです。かね。虚虚実実の戦いと言うか、生き残りを賭けた腹の探り合い。口八丁手八丁、なんでも御座れで御座る。馬鹿にされない為に人を小馬鹿にしたり虚勢を張ったりね。上下とか相手との立場関係に執着がありますね。もう虚虚実実の世界。何が何だか分かんないよ。拙者には、町田文學は早過ぎた様で御座る(´๑•_•๑)。2023/06/15
青乃108号
193
全てこの世は線虫の腹の中、しょせん世間の諸事などあってなきが如し。腹ふって踊れ。おほほ。うふふ。腹ふり党の錯乱と狼藉で城下は壊滅、ついには城まで炎上。城主と家臣は何故か人語を喋る巨猿率いる猿軍団の支援を受けて、腹ふり党の数千人の狂人に戦いを挑むが…後に残ったのは虚無。さすが町田御大の小説は狂い方が違うなあ、ぶっ飛んでるなあ、と感慨に更けっていたら俺の名を呼ぶ者が。誰が俺の感慨を邪魔だてしやがるのだ、と思ったら此処は精神科の待合室。漸く診察に呼ばれたのだった。俺は腹を振りながら診察室に歩いて向かった。2024/08/09
ケイ
148
語り口調が似ているところから「ギケイキ」と同じ流れかと思ったが、これはパンクなサムライの時代SF。物事を考える道理は、屁理屈、刀技を経て、爆発する。そして因果応報。左遷された先でめげずにいた事がこんなふうな役にたつとはね。期待してとりかからず、へんな面白いの読んでやろうぞ!くらいの気持ちで手に取るのがおすすめ。2019/04/06
抹茶モナカ
123
時代小説の体裁で描かれているが、外来語が普通に使われるし、会話も現代語で、あえて言うと、立川談志のイリュージョン落語みたいな本。実際に、落語の一説も出て来る。パンクな純文学で、格好良い。後半、引っ張り過ぎで、読んでいてつらい所もあったけど、読み終えてみて、大満足でした。2016/06/07
スエ
120
何何何っ?!イキナリ浪人が、父娘連れの父を切り捨て御免。その訳は「腹ふり党」さっぱりわけワカメな冒頭に、スエは一抹の不安を覚えた。なぜ江戸時代に「マジ」「逆切れ」なんて会話しとんねん?なんて思ったら読み進められないんだな、コレが。褌締め直して読むべしッ❢(シコも踏んじゃうぞ)笑える会話のジャブと屁理屈の応酬。なぜか辰吉丈一郎VS薬師寺保栄の試合を思い出す。ようこそ闇のワンダーランド、スエ家の芝生はゴールドラッシュ、世のちり洗う四万温泉。どんどんどん。ゲッ!異世界から戻れなくなってしまった!ぶっとび〜!!!2021/09/16
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