内容説明
一九四五年八月十五日、日本が無条件降伏を受け入れたその日、ソ連は北海道占領作戦を発令した。北千島の小島に侵攻を開始したソ連軍の圧倒的な兵力を前に、本土帰還の望みを砕かれた日本軍将兵たちの孤独で困難な戦いが始まる。一方、米国に調停を求めるため、密使はマッカーサーの許に飛んだ。祖国分断の危機を回避すべく、太平洋戦争最後の戦いに身を挺した人々の壮絶な運命を描く戦史小説。
著者等紹介
池上司[イケガミツカサ]
1959年、東京生まれ。明治大学文学部を卒業後、広告代理店勤務を経て作家デビュー。伊五八潜水艦のインディアナポリス撃沈を題材にした処女作『雷撃深度一九・五』で脚光を浴びる
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感想・レビュー
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chimako
58
さきに読んだ浅田次郎氏の『終わらざる夏』と題材を同じくするが趣も読感も違うドキュメンタリータッチの作品。なる程、読友さんのおすすめの理由が分かったような気がする。終戦後、千島列島は占守島で戦わざるを得なかった日本軍の敢闘。ロシア側の描写と交互に描かれる敗戦国日本の緊張。「今度は負けられんのだ!」誰もがそう思いながら、領土と国民の分断を阻止すべく北の果てでソビエト軍を迎え撃つ。もう、戦争は終わっているのに。父は終戦後、満州でソビエトの兵士と遭遇したことがあるという。これはたった70年程前のことなのだ。2014/11/14
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
38
「1945年8月15日ポツダム宣言を受諾し終戦を迎えた」と歴史の授業では教わった。だが、それ以後も続く戦闘もあったのだ。日ソ不可侵条約の破棄し、戦後処理を優位に進めようと参戦するソ連。それに対し背水の陣で最後の戦いを挑む日本軍。千島列島の占守島での攻防戦を描いた小説。戦史を元にしたフィクションだが、実際に戦場におられた方への調査なども含め、ノンフィクションに近い作品になっているのではないだろうか?戦後、日本が分割され北海道がされソ連領とならずに今日を迎えているのも尊い犠牲があったおかげだと知った。★★★★2014/08/09
koba
27
★★☆☆☆2019/04/13
馨
18
玉音放送を聞いて戦争終結をほっと安堵している人々に対し、満州の関東軍や北海道を守る守備隊の人たちはなおも戦いが終わっておらず、ソ連軍の攻撃に手も足も出ない状態まで追い詰められても士気が下がることなく戦い続けられています。「戦争には負けたが俺は負けていない」「北海道だけは勝ち戦にする」という気迫に圧倒され本当に頭が下がります。ソ連側の話も書かれていたのでソ連側がいかに日本軍を恐れていたかもわかりました。 2014/09/14
yamakujira
11
ポツダム宣言受諾後に勃発した対ソ戦、占守島の戦闘を、和平工作のフィクションとからめてえがく。ノモンハンやミッドウェーの生存者は確かに精鋭だろうけれど、惨敗を隠蔽するために本土を踏ませることなく北方に送りこまれて捨て石にされた運命に胸がえぐられる。ソ連軍指揮官に無駄な犠牲だったと言わせても、占守島の奮戦が果たしてどれほど意味があったのか検証する術もなく、多くの将兵の犠牲がただただ悲しい。でも、作者の意図はともかく、国として戦争責任を総括しないまま、占守島の戦闘が英雄化されると怖いなぁ。 (★★★☆☆)2019/11/29