内容説明
戦中、下関で在日2世として誕生した金天三。朝鮮人でもなく日本人でもない自分。敗戦を境に態度を覆す大人への嫌悪。底なしの貧困、差別、孤独―深い痛苦の闇に呑まれた少年は、暴力的な小悪党になり、少年刑務所への道を辿っていった。出所後、もう一度生きようと太腿に刺した牡丹の入れ墨を自ら火縄で焼き消し、上京する。しかし、それは新たな苦闘の始まりでもあった。戦中・戦後の激動期を傷だらけで生き抜く果敢な少年の感動ドラマ、前編。
著者等紹介
高史明[コサミョン]
1932年、山口県下関市生まれ。高等小学校を中退後、独学、様々な職業を経て、作家生活に入る。75年、一子の岡真史(遺稿詩集『ぼくは12歳』)が自死したことを契機に、「歎異抄」と親鸞思想に深く帰依する
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感想・レビュー
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randa
2
戦争の闇が個人の闇として浸透していく様は、ただただ恐ろしかった。無明が故に解放しようがない心は、人間を獣のような存在に変え、孤独に陥れる。生と死が常に意識されるなか、人間の存在意義を考えさせられた。少年の人との接触で生まれる心の摩擦はあまりにも痛々しく残酷だった。2018/02/09
wei xian tiang
2
高史明「生きることの意味」は10年ほど前に読み、心に残る作品だった。本作は同作への加筆と書かれているが、著者の半生を綴りながら別作品と言って良い。民族を否定された戦中から、日本国籍を否定されると同時に同国人からも疎外される戦後へ、二重三重の否定の中でアイデンティティーを喪失し闇に転落する日々。2014/12/10
さとまみ読書垢2(小説・その他専用)
0
つらい。