内容説明
人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない―。午前二時、アダルト雑誌の編集部に勤める山崎のもとにかかってきた一本の電話。受話器の向こうから聞こえてきたのは、十九年ぶりに聞く由希子の声だった…。記憶の湖の底から浮かび上がる彼女との日々、世話になったバーのマスターやかつての上司だった編集長の沢井、同僚らの印象的な姿、言葉。現在と過去を交錯させながら、出会いと別れのせつなさと、人間が生み出す感情の永遠を、透明感あふれる文体で繊細に綴った、至高のロングセラー青春小説。吉川英治文学新人賞受賞作。
著者等紹介
大崎善生[オオサキヨシオ]
1957年、札幌市生まれ。2000年、デビュー・ノンフィクション『聖の青春』で新潮学芸賞を、翌年には第二作『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。また、02年には初の小説作品『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞する。ジャンルを超えて紡ぎ出される情感あふれる物語世界が多くの読者の支持を集めている
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
229
別れを テーマにした 僕と由希子の 青春の物語である。19年の年月を超えた 二人の物語は 清冽で なぜか懐かしい。 村上春樹の世界にも どこか似て、 二人の間は 脆く 危うげで、あっけない別れが 妙に心に痛い。記憶の残像に縛られながら、 今を生きる僕…そして 19年ぶりの再会は …青春の思い出をさらりと 描いた、二人の 恋の物語だった。2018/10/29
ちょこまーぶる
161
記憶って本当に厄介な物で、忘れてしまいたい事を自分の意志とは別にしっかりと脳に焼き付けてくれちゃうんですよね。人が生きていくうえでの苦悩というか試練という奴は記憶が操作できれば、どれほど生きていくことが楽になるのか・・・だけど、生きているっていう実感ていうものは、そういう苦悩とか試練があってこそ何でしょう。難しいですね。考えさせられた一冊でしたが、好きな作家さんの一人です。2013/04/27
おしゃべりメガネ
146
およそ9年ぶりの再読でしたが、改めてこんなにステキな作品だったとはというのが、正直な感想です。初めて読んだトキも「いい作品だなぁ」と漠然には思いましたが、年月を経て、改めて読み返すと色んな場面の描写やセリフ、文章がココロに優しく刻まれます。作風としては、村上春樹さんをわかりやすく、読みやすくしたような感じで出てくる登場人物が、とても魅力的です。ハッピーな作品なのかと問われると、正直解釈はバラバラになるかと思われますが、私は好きな読後感で『一度出会った人間は、二度と別れることはできない』が好きな文章でした。2020/05/14
馨
130
静かで、どことなく結構孤独な感じの主人公が出てくることが多いですが好きな作家さんです。文章に表れる情景がとても美しいです。
おしゃべりメガネ
110
【追悼~大崎善生】四年ぶり、3回目の読了です。大崎さんの小説デビュー作で、やっぱり何度読んでも不思議と新鮮なキモチでひき込まれます。エロ本雑誌の編集長「山崎」の元にかかってきた電話は、19年ぶりに話す昔の恋人「由希子」からでした。初めて二人が出会ったトキと、それから19年後のトキを行ったり来たりして、時折どちらの時代かあやしくなるトキがありましたが、作風自体は村上春樹さんテイストで、とっても好きな雰囲気です。読む人によっては、暗い、哀しい、救われないと思うかもしれませんが、やっぱり自分は大好きですね。2024/08/08
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- 和書
- 美しいからだよ