内容説明
「初代ちゃん、がんばろうね。死んだら負けだものね」。敗戦後の満州から、なんとしても光さす故郷へ帰ろうと決意したよしは、日本への引き揚げ船を目指す。長い逃避行のなか、親を失う子、子を亡くす母親。避難民となり薮をかき分けた200キロの山越えで、足の裏は血だらけだった…。昭和18年、満州国軍歩兵中尉に嫁ぎ満州へ渡ったよしは、熱河省最大の都市で夢のような暮らしをしていた。だが、同20年8月、ソ連軍の奇襲で、幸せな日々はあっけなく壊される。400日余りの逃避行を終え、念願の故郷の駅に立ったよしの手には、小さな遺骨だけが抱かれていた。戦争の悲劇を語る真実の物語。
目次
よしの生い立ち
満州へ
夫婦
芥子のある楽園
初代
激変
青空列車
終戦
地下室
救いの手
付添婦
安東市脱出
逃避行
葫蘆島を発つ
この子は生きてます!
光さす故郷へ
帰還、そして
再出発
著者等紹介
朝比奈あすか[アサヒナアスカ]
1976年東京生まれ。慶応義塾大学卒業。出版社勤務を経て、現在アメリカ在住。『光さす故郷へ―よしちゃんの戦争』でデビュー
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感想・レビュー
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ga-ko
13
自分も非常に危険な状況で、人に優しくできるようになりたいと願っている人は多いと思うが、難しい。平和な世界になることを、こんな状況になることは二度とないように心から願い。2015/10/07
のんき
3
南伸坊装丁本。…というきっかけがなかったら読まなかったであろうジャンル、満州もの。満州について一般的知識しか持たない著者が、半世紀の間誰にも語られなかった大伯母の経験を聞き、まとめたもの。ここにある距離感が、満州について何も知らないと言っていい私でも無理なく読めた一因だと思った。でもなにより大きいのは大伯母「よしちゃん」の人柄。偶然に近い出会いだったけどこういう人のことを読めてよかった。2009/09/05
れいん。
2
著者の大伯母が経験した満州から日本へ引き揚げてくるまでの過酷な日々。昨年亡くなられた藤原ていさんの「流れる星は生きている」などで満州から博多港に着くまでに、たくさんの人が大変な苦労をされた話は知ってはいましたが、一人ひとりに違う人生があって、その経験を辛く苦しい思いをしながらも話してくれる人がいること、それを朝比奈さんのように本にして伝えてくれる人がいること、それを無駄にしないように語り継いでいかなくてはならないと強く思いました。間違った方向にいかないように、皆が自分の故郷に帰りたいと思えるように。2017/02/15
Gen Kato
2
つらくていたましい引き揚げの記録文学。70年前、こんな苦しい思いをしたひとたちは、どのくらいいたのか…2015/07/04