内容説明
芝居の面白さには果てがない。一生かけても味わい尽くせない。華やかなオーラを身にまとい、天才の名をほしいままにする響子。大学で芝居を始めたばかりの華奢で地味な少女、飛鳥。二人の女優が挑んだのは、伝説の映画プロデューサー・芹澤が開く異色のオーディションだった。これは戦いなのだ。知りたい、あの舞台の暗がりの向こうに何があるのかを―。少女たちの才能が、熱となってぶつかりあう!興奮と感動の演劇ロマン。
著者等紹介
恩田陸[オンダリク]
1964年、宮城県生まれ。91年、第3回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となり、『六番目の小夜子』でデビュー。2005年、『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞、第2回本屋大賞。06年、『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門。07年、『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
661
新型コロナウィルス対策購入シリーズ第53弾、恩田 陸は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。コロナ禍のおかげで気になっていた未読の本書を読めました。『蜜蜂と遠雷』に匹敵すると言われるだけあって、長編ですが、一気読みしました。但し、著者が三部構想をしているためか、完成度は、『蜜蜂と遠雷』が上だと思います。第二部『ダンデライオン』、第三部『チェリーブロッサム』を早く読みたい!2020/05/20
さてさて
568
オーディションという場は『選ばれる、選ばれないということの残酷さ』を伴ったものであると語る恩田さん。緊迫感のある演劇シーンの描写、『天才』に人間臭さを感じる描写、そしてこれから始まる本編に向かう期待感の描写。文字が叫び、文字が祈り、文字が舞う、恩田さんの圧倒的な文字の表現力に酔う読書。全身鳥肌状態必死の大胆なまでの伏線回収に酔う読書。「蜜蜂と遠雷」と同じ地平に立つ恩田陸さん渾身の一作であるこの作品。「蜜蜂」に心震わせた方には、あの感動が蘇るひと時。う〜ん、これいいなあ、と素直に感じた、そんな作品でした。 2021/04/30
zero1
523
見えないものを見て感動する能力は読書で必要だが、舞台演劇でも同じ。実力ある女優の響子、脚本家の神谷。そして初心者だが能力を秘めている飛鳥と彼女を見つめる巽。多くの読者が「ガラスの仮面」を連想するのがよく分かる。オーディションでの緊張と能力の解放は素晴らしい。減点は飛鳥の成長過程が表現でなく急いだ説明になっていること。続きがあるそうだが読みたい。読み友さんのレビューから興味を持って読んだ。500ページという厚さも読む価値あり。今まで恩田作品は「何か足りない」と思っていたが、考えを改めるべきか。2019/01/11
ちょこまーぶる
512
面白くて時間があれば一気読みをしたかった一冊でした。ほぼ演劇未経験の飛鳥が学生演劇集団と出会うシーンや新作劇のためのオーディションの戦いは、まるで映像を見ているような感覚に襲われました。そして、天才女優響子の女優としてのプライドと自分自身の感情に折り合いをつける場面には、まさにその世界ならではの独特な思考を垣間見ることができました。それにしても、飛鳥に逢ってみたい・・・彼女の舞台の完成系ではなくて、本番までのプロセスに付き合いたいという感情も抱くことになりました。舞台の間合いと闇・・・味わってみたい。2014/10/07
パトラッシュ
478
演劇や音楽の選抜を目的とするオーディションに挑む青春群像劇を描いた小説は、舞台で全力を出し切った登場人物の合否を読者に言葉で納得させるだけの細部のリアルさがカギだ。著者の『蜜蜂と遠雷』はその点が深く書き込まれていたが、ずっと前の本作はやや物足らない。特に響子と飛鳥が女優として成長するまでの描写が薄く、二人の天才ぶりがピンとこないのだ。しかし、後半のオーディションシーンの対決で読者を引き込むテクニックは見事であり、物語作家としては練達の筆だ。飛鳥役を土屋太鳳か二階堂ふみで実写映画化したら面白いのではないか。2020/09/05