内容説明
昭和十一年一月、二・二六事件前夜の東京で、『文学界』からひとりの天才作家が生まれた。ペンネーム以外は謎に包まれたその作家の名は、北条民雄。まだ二十一歳の青年だった。ハンセン病を病みながら文学の道を志し、川端康成に見出されて傑作「いのちの初夜」を残した民雄は、いかに生きて、いかに死んだのか。差別と病魔との闘いのなか、強烈な個性と自我に苦悩し、二十三歳で夭逝した民雄の絶望と愛、生の輝きを克明に綴る感動の長篇。大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞受賞作。
目次
序章 ある回想
第1章 まぼろしの故郷
第2章 破婚
第3章 全生病院
第4章 わが師、川端康成
第5章 作家誕生
第6章 生きいそぐ青春
第7章 いのちの初夜
第8章 放浪と死と
第9章 転生の秋
第10章 遙かなる帰郷
第11章 二十三歳で死す
終章 ふたたびの回想
著者等紹介
高山文彦[タカヤマフミヒコ]
1958年、宮崎県生まれ。法政大学文学部中退。95年、98年に「雑誌ジャーナリズム賞・作品賞」を受賞。『火花』で第三十一回大宅壮一ノンフィクション賞、第二十二回講談社ノンフィクション賞を受賞する
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
104
第31回(2000年)大宅壮一ノンフィクション賞。 23歳の若さで逝った天才作家北条民雄のノンフィクションである。癩病を発症し、わずか三年半の作家活動で亡くなった作家の生き様が 蘇る。恩師川端康成との交流が心に染みる。 評伝でありながら、ひどく繊細で抒情的な 語りは作家の心根を表している気がする。 昭和初期の文壇の動きも新鮮な、そんな作品だった。2023/02/26
kawa
30
らい病から結核を発症、23歳で早逝した小説家・北条民雄氏に追うノンフィクション。大宅壮一ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞の受賞作。病に対する氏の葛藤と、彼の才能を評価して暖かくバックアップした川端康成氏との交流が中心に描かれる。隔離施設の全生病院での同病患者との交流や、同院の様子も読みどころだが、科学的な究明が不充分だった当時のらい病患者に対する社会の冷たい反応に暗澹たる思い。因みに偶然読んだ北条氏の出世作で本作でも取り上げられている「いのちの初夜」は初読、再読とも各々の年のマイ・ベスト作。2026/02/22
miel
20
北条民雄に片思いを続けた筆者の渾身の作、濃密で圧倒的な熱量をひた隠しに淡々と綴る力作、読んでよかった。著者の優しさと愛は、川端康成にも劣らないと感じる。ハンセン病の不条理さは社会的に抹殺され、存在を無にされること、知識としては知っていてもあまりにも嘆かわしく言葉がない。人間の尊厳を奪われただの生物として扱われる悔しさ、それが許される世相の異常さ、その中でも様々な思いで生きるいのちの清廉さに始終心を掻き乱される。北条民雄の若さゆえの足掻きが痛々しい。闇に一瞬輝く「火花」、その通りの人生は重くて尊い。2019/02/28
chanvesa
18
北条の生き様、性格は激烈で若さ・青春のもたらす強さ、ある意味での傲慢さがこの本から伝わる。そして、いまの私と同じような年齢の川端康成がその青い男を優しく見守り、手を差しのべている。川端は、芸者さんの話を書く、なよっとした作家だと思っていたがとんでもない話だった。しかも『雪国』はあの忌まわしい時代に書かれていたなんて。川端をもう少し知らなくてはいけない。そしてハンセン病というあの時代に人々の運命を破壊した業病を乗り越え、二人の作家は生い立ちや宿命との闘いでつながっていたのだろう。2014/08/31
shikada
17
ハンセン病(癩病)の苦しみを文学に昇華させた北条民雄の生涯を追うノンフィクション。当時、ハンセン病は遺伝するなど誤解され、治療薬もなかったことから、患者たちはある種忌み嫌われ、無癩県運動によって病院に収容・隔離され、親族たちも発症を隠した。北条はそうした差別を受け、重症患者たちと生活し、自らも病に苦しみながらも、川端康成との文通に救いを見出して、小説を書き続けた。23歳の若さで亡くなった北条の人生はなんとも苛烈なものにみえる。ハンセン病の歴史や、文學界の創刊の経緯を知れるのも本書の良いところ。2024/08/18
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