内容説明
押入で死んだように生きる木幡小平次は、天下随一の幽霊役者。ある時、旅巡業の声がかかるが、それは凝り続けた愛と憎しみが解き放たれる修羅の幕開けであった。女房・お塚を始め、小平次の周りに蠢く生者らの欲望、悲嘆、執着が十重二十重に渦巻き絡み合い炸裂し―やがて一つの異形の愛が浮かび上がる。人間という哀しい華が圧倒的に咲き乱れる、これぞ文芸の極み。古典怪談に材を取った『嗤う伊右衛門』に続くシリーズ第二弾。第16回山本周五郎賞受賞作。
著者等紹介
京極夏彦[キョウゴクナツヒコ]
小説家、意匠家。1963年北海道生まれ。94年、かねてよりアイデアを温めていた妖怪小説『姑獲鳥の夏』で小説家デビュー。『魍魎の匣』で第49回日本推理作家協会賞、『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、『後巷説百物語』で第130回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
139
ああそうか、捨てられたからなのか。惚れていたのだなあ、精一杯に。それで腑に落ちる。お堂の中で、冷えた身体に肌を合わせて温めてもらったそれを、忘れられなかったか。あんたは生霊だったんだねえ。そこんところが一番ゾクリときた。小平次のようなオトコを飼う女の酔狂は、アッパレ。根っこにあるのは、色んなかたちをした恋心。又市には再会できなかったが、共に愛の妄念をみとどけた気になる。2019/08/31
優希
109
全体的に暗く、淡々とした雰囲気が漂いますが、それが独特の空気のようでした。小平次は押入れの中で死んだように生き、ただ覗いているだけ。俯瞰的に欲望や悲嘆、執着といった感情を見つめるが故の儚さ。そしてそれらの感情は絡み合いながらいびつな愛を浮かび上がらせるというのがほのかな美しさとして見えてきます。人間の哀しみが咲き乱れる花のように広がり、怪談文学としての情緒を感じさせられました。古典怪談をベースに作り上げる世界の無限の可能性が秘められている気がします。2017/02/24
遥かなる想い
92
江戸を舞台にした京極怪談である。 闇の中から 覘き見る小平次が 不気味で、圧巻の存在感を放つ。 登場人物の視点で 物語は多面的に進むが、 一貫して小平次は闇の中にたたずみ、 自分を出さない。 江戸に住む人々の心の闇を描く、 人情物語だった。2023/07/22
はらぺこ
82
表紙は怖いけど中身は陰気。京極堂に比べてページ数は少なかったけど知らん言葉とかが多かったので読むテンポが上がらなかった。より理解する為に雰囲気で何と無く解る言葉も含めて調べた言葉は「乞胸」「山鯨」「ひ文字」「雲助」「慶安口」「駒の朝走り」「憲房乱れ」「金烏玉兎」「自棄の勘八」「乱華迷離」など。この中にはネットで検索しても解らないのも有ったので結局字面や雰囲気で読むのが一番なんやなぁと思った。2012/09/11
二代目 びあだいまおう
75
ひゅ~どろどろ~、背筋ゾクッ‼️夜中1人で読むと、なんか気配感じて布団かぶりたくなる、ラストはそんな京極節!怖い?いや、おどろおどろしい‼️『覗き小平次』だよ?小平次が覗いてんだよ?このゾワッと感は『嗤う、、』で伊右衛門が嗤った場面を思い出します😱❗ お塚が憎めなくて好き。シリーズメチャクチャ楽しみです‼️🙇💦2018/09/23