内容説明
怪異譚を蒐集するため諸国を巡る戯作者志望の青年・山岡百介は、雨宿りに寄った越後の山小屋で不思議な者たちと出会う。御行姿の男、垢抜けた女、初老の商人、そして、なにやら顔色の悪い僧―。長雨の一夜を、江戸で流行りの百物語で明かすことになったのだが…。闇に葬られる事件の決着を金で請け負う御行一味。その裏世界に、百介は足を踏み入れてゆく。小豆洗い、舞首、柳女―彼らが操るあやかしの姿は、人間の深き業への裁きか、弔いか―。世の理と、人の情がやるせない、物語の奇術師が放つ、妖怪時代小説、シリーズ第一弾。
著者等紹介
京極夏彦[キョウゴクナツヒコ]
小説家、意匠家。1963年北海道生まれ。1994年、かねてよりアイデアを温めていた妖怪小説『姑獲鳥の夏』で鮮烈な小説家デビュー。『魍魎の匣』で第四十九回日本推理作家協会賞、『嗤う伊右衛門』で第二十五回泉鏡花文学賞、『覘き小平次』で第十六回山本周五郎賞を受賞
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感想・レビュー
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ヴェルナーの日記
217
本作の元ネタは、江戸時代後期の戯作者・桃花園三千麿による『絵本百物語』で、竹原春泉斎の挿絵によるもの。その中の7編が編まれている。自分的に好きな作品は『芝右衛門狸』。あくまで自説ですが作品に登場する『長二郎』は、松平長七郎(江戸幕府の第3代将軍徳川家光の弟・徳川忠長の子とされる架空の人物)、もしくは松平右近(十一代将軍・徳川家斉の実弟)なのでは、と考える次第。ですが元ネタ『絵本百物語』は、殆どが絵で構成されていて、物語は有って無きに等しい。そこからこれだけの物語を編み出す創作力は流石としかいいようがない。2015/11/28
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
174
私の記念すべき京極作品デビュー本♡受験勉強真っ盛りの時に読んで衝撃を受けて、勉強ほっぽりだして夢中になった思い出の本です。 百物語を下敷きに、難事件を「怪異」で解決する御行一味の7つの活躍。江戸時代を舞台にしたミステリのような趣き。金の為にと言いつつも、弱きを助け悪を裁き、場を怪異で納める手腕には毎回惚れ惚れ、そしてスッキリ!やっぱり好きです京極さん。全部の話好きだけど、狸とお爺さんの交流が泣ける「芝右衛門狸」、無常感を説くような「帷子辻」が特に好み。 久々に京極堂シリーズも読み返したいなぁ。2019/03/28
らむれ
92
高校時代、読書家の友人に勧められたものの、読破できなかった京極作品にやっと手を付けました。もはや意地(笑)興味がなさそうな設定や表紙でも、ページをめくるとどんな世界が待っているかわからないから、好き嫌いせずに読まなければ。と思っているのですがやはり手が伸びす、10年弱積読でしたwやっと読み切ってなんか達成感!いろんな作家さんやジャンルをかじりたいけど、一生で読める本って限られてるのよね。あぁ無常。とか思いながら粋な仲間たちと御行してきました。あぁ無常。妖怪がらみの勧善懲悪仕事人ストーリー。2015/11/12
流言
92
逆ミステリ、とでも言うべきか。江戸の裏に住まい闇を翔ける異物を怪談調のミステリに仕上げた逸品である。ポイントなのは怪談調というところで、いかにも魑魅魍魎の跋扈するおどろおどろしいような雰囲気を演出しつつも種を明かせばあっさりと人の手によるものだと判明して視界がさあっと変貌するような感覚がある。おかげで、ジャンルのわからない前半の話は怪談として手探りで楽しみ、仕掛人のわかった後半の話はどうやって辻褄を合わせるのかを考えるミステリとして楽しむことができた。ひょっとして作者の思惑に乗せられてしまったのだろうか?2014/09/10
ntahima
92
面白いことは面白いけど一冊読んだら疲労困憊してしまう極太京極堂シリーズとは違い日本の伝統を感じさせる静かで端正な筆遣い。一日一遍ずつじっくり楽しめた。「嗤う伊右衛門」に始まる大江戸怪談再解釈シリーズ?も読んでみたくなった。ただデビュー作は「姑獲鳥の夏」で」良かったと思う。「巷説シリーズ」や「江戸怪談シリーズ」ではあの爆発的な京極夏彦シンドロームは起こらなかった思う。なんにしろこの多種多産ぶりには恐れ入る。2010/01/29
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