内容説明
応化二年二月十一日未明、“救国”をかかげる佐官グループが第1空挺団と第32歩兵連隊を率いて首都を制圧。同日正午、首都の反乱軍は“救国臨時政府樹立”を宣言。国軍は政府軍と反乱軍に二分した。内乱勃発の年の春にすべての公立学校は休校となった。そして、両親を亡くした七歳と十一ヶ月の佐々木海人は、妹の恵と、まだ二歳になったばかりの弟の隆を守るために、手段を選ばず生きていくことを選択した―。
著者等紹介
打海文三[ウチウミブンゾウ]
1948年生まれ。早稲田大学政経学部卒。93年、『灰姫―鏡の国のスパイ』が第13回横溝正史賞優秀作となる。翌年発表した『時には懺悔を』が各方面で絶賛される。2007年10月9日、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さすらいの雑魚
52
裸者と裸者 孤児部隊の世界永久戦争。応化クロニクル第一作の発表からほぼ20年。作者急逝で未完の最終巻を手に取った日の衝撃は忘れられない。本シリーズで描かれるのは軍閥争覇の地となった日本。性的少数者、フェミニスト、保守主義者、在日外国人、各国マフィア等が軍閥に負けぬ武装部隊を組織しテロに戦闘にと殺し合うなかで親を亡くした少年は弟妹を守るため孤児兵となる。いずれ劣らぬ悲惨な境遇の彼等の恋と友情と裏切りと殺戮の日々を描く本作。この狂った世界で闘い続け生き残る事が弾除け孤児部隊に許された唯一の叛逆。そんな第一巻。2022/01/17
異世界西郷さん
31
経済恐慌によって内戦が勃発した日本を舞台に、孤児の少年が妹弟を守るために少年兵として戦う話。読みながら思ったのは、ウクライナや中東諸国など、世界中で起こっていることが日本で起こらないとは限らないんだよなぁということでした。主人公を含め、教育を受けていない少年兵のセリフがほとんどひらがな表記なのも読んでいて怖くなってしまいました。内戦が長引けばどんな影響がでるのかを著者はよく理解していたのでしょう。主人公が軍の中で頭角を現していく様は読みごたえがありました。下巻を求めて、古本屋行脚が続きそうです。2015/04/02
タカギ
27
容赦がなくて、でもどこかユーモアがあるような、不思議な話。いや、もう、徹底的に絶望的ではあるんだけど。女と見ればレイプし、子どもは売り飛ばし、略奪の限りをつくす世界。家族を守るために少年が軍隊に入り、混乱の中でどこかに連れ去られた母親を探しながら出世する、成長の物語でもある。子どもたちはみんな賢くてたくましくて図々しい。子どもを虐待するやつはマジで許せない。伊坂幸太郎が大ファンなのもよくわかった。2024/09/14
inote2
23
日本が戦場になるなんて想像したことがなかったので衝撃的でした。孤児が増えたり、教育を受けられないといったことがどこまでリアルかわからないけどよく書かれていると思う。 作者の方がなくなられているのがとても残念。2014/02/15
Toshi
20
読み友さんからの推薦だが、まずこんな小説があったことに驚くとともに、打海文三をこれまで知らなかったことを深く反省。シリーズ1作目のしかも前編を読み終えたばかりなので、まだ多くは語れない。「終わりの見えない戦闘と暴力の地と化した日本を舞台にした少年の成長物語」と言った、紋切り型の紹介では伝えきれない、ディーテールとドラマ量に圧倒されている。2021/08/20