内容説明
―教えたら旦那さんほんまに寝られんようになる。…この先ずっとな。時は明治。岡山の遊郭で醜い女郎が寝つかれぬ客にぽつり、ぽつりと語り始めた身の上話。残酷で孤独な彼女の人生には、ある秘密が隠されていた…。岡山地方の方言で「とても、怖い」という意の表題作ほか三篇。文学界に新境地を切り拓き、日本ホラー小説大賞、山本周五郎賞を受賞した怪奇文学の新古典。
著者等紹介
岩井志麻子[イワイシマコ]
1964年、岡山県生まれ。99年、「ぼっけえ、きょうてえ」で第六回日本ホラー小説大賞、第一三回山本周五郎賞を受賞。『岡山女』が直木賞候補になる。独自の世界でホラー文学を開拓している注目の作家である
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
297
夏らしく、ホラーでも読もう。有名な作品が良いかな。おや、装丁画の雰囲気もいい感じでこれは怖そうじゃないか。短編集なのか。短編集、苦手なんだって。しょうがない。読んでみるか…表題作は読みやすく、そこそこ怖い。二番目、三番目はほとんど印象に残らない。そして四番目。出てくる。件(くだん)が。頭は牛で体が人間の化け物。これって怖いですかね。何か想像するとユーモラスで怖さを感じないんですけど。小松左京の【くだんのはは】は表題作のくだんにめげて、読むのを止めてしまった覚えがあるから、やっぱりくだんは苦手なんだな。2022/08/17
hideko
252
再読。何度、繰り返し読んでも面白い。こういう、日本的な土着的というか、ジットリとした世界観大好きです。 ここから岩井志麻子さんにハマってかなり読んだな。 岡山に対してのイメージが暗い土地(関係者の方、スミマセン)だと私の中で植え付けられた一冊。 (´•ω•`;)2017/03/18
明智紫苑
218
私が好きな作家さんたちには何人か岡山出身の方々がいるけど、やはり岩井さんが一番曲者で「きょうてえ」。塚本青史さんも宇月原晴明さんも一筋縄ではいかない作風だけど、岩井さんは別次元。2015/01/26
bookkeeper
155
★★★☆☆ 再読。「ぼっけえ、きょうてえ」女郎が語る寝物語。生命の尊厳や情愛の光の差し込まぬ地獄。姿形よりも心の形がどこか決定的に捩くれてしまったものが、じわじわと浮かび上がってくる。 「あまぞわい」激しく波の打ち付ける岩礁。そこに繋がれた亡霊は夫に尽くして死んだ海女か、手籠めにされた挙句殺された尼か。いずれにしても男に食い物にされて報われない…。 郷愁を掻き立てる"古き良き日本の原風景"が内包していたかもしれない、じめっとした恐怖。昔も良いことばかりでは無かったのね。ほんときょうてえ…(◞‸◟)2019/05/18
absinthe
134
嫌ミスのような読後感の短編集。19世紀末の日本。時代背景も雰囲気をよく醸し出している。転職や引越しの自由もない窮屈な時代。どれだけ境遇が嫌でも現状を打開できない。そういう中での恐怖体験。ビジュアルに訴えてインパクトが強い表題作が面白いが、お気に入りは『あまぞわい』。岩礁のことを”そわい”という岡山の方言で表した。きれいな言葉だなぁ。どの作品も面白かった。人の恨みや心の闇が映し出す幻想的な世界。作品を引っ張るのは人物の罪の意識。2024/11/01