内容説明
平安期の大歌人、紀貫之が侍女になりすまし、帰京の旅をかな文字で綴った紀行文学の名作。国司の任期を終えて京へ戻る船旅は長く苦しい日々の連続であった。土佐の人々に温かく見送られ出発したものの、天候不順で船はなかなか進まない。おまけに楫取はくせ者。海賊にも狙われる。また折にふれ、土佐で亡くした娘を想い悲嘆にくれる。鬱々としながらも歌を詠み合い、ひたすら都を目指す一行の姿が生き生きとよみがえる。
目次
女の私も書いてみる―男もすなる日記といふものを
船旅なのに馬のはなむけ?
国司の館で送別会
帰らぬ人を偲びつつ―大津出立
詩と歌のセッション
押鮎にキッス!―浦戸から大湊へ
お返しも楽じゃない
池の若菜に「いとをかし」
「白波」はNGワード!
水の中の月〔ほか〕
著者等紹介
紀貫之[キノツラユキ]
平安時代中期の歌人。醍醐天皇の勅命により、紀友則らとともに『古今和歌集』を撰進。歌界の第一人者として指導的役割を果たした。三十六歌仙の一人。家集に『貫之集』がある
西山秀人[ニシヤマヒデト]
上田女子短期大学教授。1963年生まれ。日本大学大学院博士後期課程単位取得。専門は平安時代の和歌文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ykmmr (^_^)
98
日本独特の、さらにはお洒落な文化が育ち、そして、著名で魅力的なイケメン・美人も多かった平安時代。(架空の人物も含)。その時代に、一男でありながらも女性のフリをして…「男もすなる…。」なんてバレバレの冒頭を堂々と書き、かな文字フル使い、さらには和歌付きなんて…他にもいそうだけど、こんな事をしているのは彼だけ(多分…。)。完全に時代に乗っている。『六歌仙』には入っていないけど、『三十六歌仙』には入っているから、一句の実力もまずまずなんだろう。(歌は難しくて私には分からない。)物語は普通に面白い。ビギナーズ最高2021/11/23
佐島楓
37
勉強用。駄洒落が多いことに驚く。女性が使う文体で、さらに自分を茶化していたのだろうか。2016/03/28
ゆずきゃらめる*平安時代とお花♪
36
〈日本の古典を読む第5回:土佐日記〉のイベントより♪任地の土佐から京へ帰る日々の奮闘日記。作者は男性なのに女性を演じて書かれているのが面白い。たまにもろが出て男性ならではの漢詩風がまたユーモアだ。2017/05/17
Pー
35
古典を読むってこんなに面白いなんて・・かって高校時代、古文は苦手な科目のひとつだったのに。。。ばあさん先生によく叱られたのを懐かしく思い出した。これは歌人「紀貫之」が土佐守として赴任していた高知から京に戻るまでの55日間の船旅日記。貫之は女言葉である平仮名を使って女官に成りすまして綴っている。でも、所々で男言葉がポロリだったり、下手(?)な駄洒落を入れたり意外に愉快な一面を持った偏屈老人として描かれているのも楽しい。流石は歌人58首の和歌を挟んだこの散文、立派な日記文学でしょうね。古典も読もうかな・・・2016/10/18
しゅてふぁん
31
土佐での任期を終えた紀貫之が、京へ帰るまでの五十五日間の旅路を女性と偽って仮名文字で綴った日記文学。平安時代の旅日記!そう思うとなんだか凄いものを読んだ気分になる。内容は悪天候で何日も足止めを食らったり、海賊に怯えたり、海難事故が多い鳴門海峡でみんなで神仏に祈ったりというもの。あまり楽しい雰囲気ではなかったなぁ…。事あるごとに歌を詠んだり祈ったりしているところに平安時代を感じた。2017/10/05