内容説明
放送局のディレクターを辞した葛原順は、35歳にして初めて臨時採用の中学の先生になった。受け持ったクラスは、一筋縄ではいかない生徒たちが談論風発。陳腐な価値観の押しつけ、型通りの授業などは即刻一刀両断に。周囲の教師は、「札付きですから厳しく締め付けないと…」と繰り返すばかり。あらかじめ生徒を偏見でみることだけはしないという信条を頼りに、葛原は素顔の生徒に向きあう。だが、丸刈りに反対して学校に通わない少年、一切口をきかない少女、そして神経症の闇に沈む妻透子の存在が、葛原に大きな問いを投げかけていく。子供から学ぶことの大きな可能性を伝える感動の小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
hnzwd
37
子供の時、砂場で自分がどんなことをして遊んでいたかを考え、こういうふうに遊びなさい、なんてお手本は無かったけど楽しかったなぁ、と懐かしく思いました。最初からルール・結論があって、それに当てはめられることに対して疑問を感じ、反発することは人として当然の事であって、そこを一緒になって考え、おかしい事には一緒におかしいと声を上げることは一つの理想形。それでも、こういうものだ、という決めつけから入らずに、どういうものかを感じ、どうするべきかを考える、ってのを自然にできる人間になりたい。素晴らしい作品でした。2014/06/11
星落秋風五丈原
24
35才で臨採といわれる臨時採用の中学教師になった葛原順は、教室でマンガを描いて職員室に立たされていた3年C組の西文平を知る。「哲学」という綽名を持つ少年は葛原に「先生、変わってますね。」と言う。確かに変わった教師であり生徒だ。しかし初めて会った日から二人の間には通じ合うものがある。葛原はかつてTVディレクターだったが妻の心の病で休職し、それがきっかけになって学校という化け物の世界に入った。教師だ1991/03/10
まぁいっか
20
久しぶりに再読。中学生の頃に灰谷健次郎さんの作品にハマっていたのを思い出して,引っ張り出してきました。多分,この作品を読んで葛原先生の先入観を持たないところを尊敬したから,自分もそういうスタンスで初対面の人と接するようになったんだろうな。周りの人からいくら評判・批判されていたとしても,自分の目で確かめて自分が感じるままにその人と接するべきだと思う。百聞は一見に如かず。2012/05/27
ピンクピンクピンク
12
小学生の頃、先生が貸してくれた本をきっかけに灰谷健次郎さんをよく読んでいた。多分その頃手に入れたもの当時では難しかったのか、本棚に永く眠っていた一冊をこの機に取り出しました。90年代の中学校を舞台に教育という「生モノ」について多岐に考えさせられます。特に印象的なのか授業の場面。葛原先生の丁寧に語り合いながら作る授業や、農業教室に参画し実践的に学んでいく姿を見るとこれぞ真の学力が身につくだろうなと思います。コロナ禍で学力低下が不安視される今こそ、理想的学習を諦めず目指す必要があるのではないでしょうか。2020/05/13
あきひこ
4
35歳にして初めて臨時採用の中学の先生になった男性が主人公。彼は生徒へ偏見をもたないことを信条に様々な問題を抱えるクラスを担任として奮闘する。あたりまえだけど、実際の教育現場はこうも一筋縄ではいかんですね。でも物語としては面白いし、考えさせられることが多々ある良い小説でした。主人公はぶれない伸をもっている!これがすばらしい。こうありたいものです。2013/08/12




