内容説明
わたしが受けた一つの衝撃から語りはじめたい。三年間中学校に行かなかった少女からの手紙がわたしに届いた。少女の文章には一個人の体験にとどまらず、「教育」というもの、さらには人類の行く末までに至る問題が含まれていたのだ。怒りを怒りとしてでなく、すべての怒りを海に注ぐ水のごとくに、未来を見据えて語ったその静けさが、私たちの胸を深く、そしてつよくたたく。表題作の他、子供の詩、島での暮らし、北朝鮮訪問、人生で巡り会った人たち、あれこれの本などを巡る灰谷健次郎の最新エッセイ集。子どもの心、いのちの行方を真摯に見つめ、深い示唆に満ちた一冊。
目次
すべての怒りは水のごとくに―ある少女の声
回転木馬
とても困った、ある日々のこと
わたしの中の水上勉さん
優しい人びと
映画を見るのが怖かった
島で暮らす
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)訪問の記
本あれこれ
希望への橋―わたしの子ども原論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BB
7
兎の眼、からの流れで昔読んだ一冊。
うりぼう
3
覆水本に返らず。すべては「全て」ではない。2001/08/23
あんず
2
灰谷さんのエッセイ2冊目。なんか灰谷さんの言葉は、現代に毒された自分には難しいことばかり書かれていて、自分が駄目なやつだなぁと思ってしまう。天の瞳が読みたくなった。今度見つけたら買おう2019/04/24
thugu
1
信念というものを強く感じた一冊。以下、印象に残った箇所。〈生まれてくる人はみな、たった3尺の足はばの人生を生きるしかないのです〉〈そのときの絶望感は、即、死を賜りたい、とでもいうような思いである〉〈これからどうなるのか、それは誰にも分からない。が、今、そうあることが、その人の全人格なのである〉〈子どもたちから学んでそれを返してやる―それが僕たちの仕事なんだ〉〈こちらが一方的に与えるのではなく、相手が何を求めているかを問うのである。この試行錯誤こそ、親心に通じるのではないか〉2020/11/29
あんこ
1
なんて謙虚な方なんだろうか。彼の穏やかな遺書を先に拝見しており、遺書から遡って辿り着いたエッセイ。灰谷さんの死生観に興味があり「死について」の一節をもうすこし掘り下げて知りたい。2020/05/03