出版社内容情報
ノーベル賞作家バルガス・ジョサのの長編デビュー作で、「ラテンアメリカ文学ブーム」の幕開けとなった記念碑的作品。
内容説明
厳格な規律の裏で不埒な行いが横行するペルーのレオンシオ・プラド軍人学校。ひとつの密告がアルベルト、“奴隷”、ジャガーら少年たちのいびつな連帯を揺るがし、一発の銃弾に結びついて…。ラテンアメリカ文学を牽引するノーベル賞作家による圧巻の長編デビュー作。
著者等紹介
ジョサ,ホルヘ・マリオ・ペドロ・バルガス[ジョサ,ホルヘマリオペドロバルガス] [Llosa,Jorge Mario Pedro Vargas]
1936‐。ペルーの小説家。1959年に短編集『ボスたち』でデビュー。長編デビュー作であり、10代のうち2年間を過ごしたレオンシオ・プラド軍人学校での経験をもとに書いた『街と犬たち』(1963)によってビブリオテカ・ブレベ賞を受賞し、その世界的成功がラテンアメリカ文学ブームの嚆矢となる。2010年にはノーベル文学賞を受賞
寺尾隆吉[テラオリュウキチ]
1971年生まれ。早稲田大学教授。ラテンアメリカ文学研究者、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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どんぐり
96
ノーベル賞受賞作家マリオ・バルガス=リョサの古典新訳。ペルーにあるレオンシオ・プラド軍人学校に3年間寄宿生活を送る少年たち。煙草や酒の闇取引、試験問題の不法取得とその売買、トイレでのポーカー、自慰コンクールに、いじめと暴力による報復合戦。最初は誰が誰で、何がなんだかわからないまま話が進み、「奴隷」とよばれる少年の死によって急転直下、大人をも巻き込む怒涛の展開。犬たちは大きな力によって屈してしまのか、これは青春小説の傑作といっていい。2022/10/28
Shun
36
ペルー出身のノーベル賞作家、初読み。作家の実体験を創作の種とした物語のようです。ペルーの軍人学校に在籍するまだ少年という形容が相応しい生徒たちの間には、およそ軍隊的な規律とは言えないあらゆる悪徳が横行していた。試験の答案を盗んだり、士官に隠れての飲酒や喫煙、夜間に抜け出し色街での不道徳な行為等がそうだ。中にはそれを男らしさとして理解を示す教官もおり、ここで繰り広げられる暴力的な世界は卒業し大人になった彼らの世界とも地続きなのかもしれない。悪童たちの連帯に加わらない者は蔑まれ、勇気ある英雄の告発には制裁を。2022/06/28
qwer0987
13
はっきり言って本書は読みづらい。誰のことを語っているのか読み取りにくい場面もあるし、時系列もいじられていて頭の中で整理するのが難儀な面もある。にもかかわらず本書は面白い作品だった。軍人学校を舞台にしているだけあり閉鎖的な空気が漂い、それだけでも読み応えあるが、ある生徒の死から物語はさらに動く。そこから巻き起こる組織の隠ぺい、生徒たちの疑心暗鬼、アルベルトの後ろ暗さ、ジャガーの高慢にして誇り高い姿勢など、心に刺さる展開が続く。閉鎖的な組織内での人間模様を的確に描き上げた佳品である2024/11/08
ふみふみ
11
リョサ先生のデビュー作ということで手に取りました。ただ、軍人学校が舞台の少年たちの物語という内容にまるで興味なかったので、読み始めは途中で投げ出しちゃうかなと思ったのですが、そこは流石のリョサ先生、きっちり引き込んでくれました。そして、最後のエピローグを読み終えたときには、前半のエグイ程のいじめ、暴力描写のインパクトは何処へやら、ほろ苦い青春物語だったなと感じ入った次第です。主要キャラに絡むメロドラマパート(少女との淡い恋愛)の絡みも効いていましたし。2022/10/11
ポルターガイスト
7
後半3分の1くらいから読む手が止まらず明日仕事なのにかなり夜更かしして読了してしまった。久々に小説に夢中になれた。スピード感最高だった。クラクラした。解説のとおりとても多様な読みができる小説だった。おれは一読した限り「誠実さという意味での青春」に関する物語だと思った。それぞれの誠実さがありそれ以上に耐え難いほどの欺瞞がある。死なずに大人として生きていくためには,それを曖昧なまま受け入れていくしかない。2022/07/24