内容説明
昭和四十三年、夏至の早朝、在日韓国人夫婦のあいだに一人の女の子が生まれた―。家族のルーツ、両親の不仲、家庭内暴力、苛烈をきわめた学校でのいじめ、そして自殺未遂…。家庭や学校、社会との、絶え間ない葛藤と軋轢のなかで歩んできたみずからの姿を見据え、類いまれな“物語”へと昇華した感動の一冊。作家としての豊かな資質を示し、読者に生命の力を吹き込んだベストセラー作品、待望の文庫化。
目次
1 畳のしたの海峡
2 校庭の陽炎
3 劇場の砂浜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
72
著者20代の終わりの自伝的エッセイ。在日韓国人、母親の育児放棄、性的いたずら、きょうだい喧嘩に両親の不和、父親のギャンブル癖と家庭内暴力、母親の不倫と出奔、学校でのいじめと差別、万引き、リストカットに自殺未遂、ストレスによる過呼吸、高校中退、の数々の痛々しい出来事。早い時期に自伝を書き、過去を埋葬し得たのか、いまも作家活動を続けていることが救い。2020/05/16
James Hayashi
32
自伝的エッセイ。在日韓国人として波乱な青春期を送った著者。凄まじい。両親との関係もそうだが、これだけ特異な人生を歩んでこられたなら、強い人間性、個性的な人間になることは全く不思議ではない。この強さは日本人にはなかなか無い物なのかもしれない。2019/10/02
あつこんぐ
27
図書館本。痒いところに手が届く林真理子さんの解説が良かったです。柳美里という人はどんな子供時代を過ごしたのだろうと手に取った1冊。これだけ酷い目にあっても、麻薬や売春などに手を出さなかった柳さんは強い人だと思います。でも、自分の事を書くという行為は自傷行為に近いのではないかと思いました。でも、読むことが止められずほぼ一気読みです。目が離せない作家さんです。2018/05/29
ミカママ
27
この作者の「命」シリーズを一時期夢中で読んだ覚えがあります。壮絶な人生だよね。しかし、この本も、読めば読むほど痛々しい・・・。2013/09/04
秋 眉雄
17
柳美里さんの生い立ちから役者断念までの歴史。『もしかしたら私の陰惨な記憶も案外自己憐憫によるフィクションかもしれない』2019/11/24
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- 和書
- 十二支のおもちつき