内容説明
銀婚式の日に妻と英国南西部の田園を車で旅する上流階級出身のアシャーストは、途中ある村に立ち寄る。そこは26年前、彼が村娘ミーガンと恋に落ちた場所だった。当時は駆け落ちまで企てながら、結局身分差を理由に彼女の元から逃げ去ったのだった…。甘い感傷で彼女との思い出に浸る彼は、地元の農民から、かつて自分が行った無慈悲な行為の結末を初めて知らされる…。ノーベル文学賞作家による名作。
著者等紹介
ゴールズワージー[ゴールズワージー][Galsworthy,J.]
1867~1933。イギリスの作家。ロンドン近郊キングストン・ヒルに生まれる。裕福な家庭出身で、名門ハロー校の後にオックスフォード大学で学ぶ。弁護士の資格を取得したが、法律にあまり興味が持てず、家業の船舶業を手伝いながら世界を旅する。1932年にノーベル文学賞受賞。国際ペンクラブ初代会長も務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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レモン
35
現代の感覚で読むとなぜこのような作品が評価されたのかと思ってしまうが、解説を読むと理由がわかる。当時は階級意識が強いとはいえ、僅か1日で心変わりしてしまいそのまま連絡を断つアシャーストはあまりにも身勝手。旅先の美しい風景に心が浮き立ち、つい身分の低い少女に恋をしてしまったのか。自殺方法が愛の深さを表しておりとても切ない。美談とまではいかないにしろ、アシャーストがちょっとした武勇伝のように捉えているように見受けられるところが浅ましい。内容と美しい田園風景の描写があまりにも乖離しており、両者を際立たせている。2024/04/24
かおりんご
33
小説。大学のレポートで書かなきゃいけないので読んだのですが、主人公の行動がありえん!自分とすむ世界が違うから捨てる?人を翻弄しておいて逃げるなんて。時代が時代だし、階級社会だし、現代の日本とは色々と違うのかも知れなけれど、きちんと別れるべきだったろうなと思う。さて、この話をどうレポートにまとめるかが、これからの課題。『出てくる男性が嫌いです』じゃ、単位はもらえそうにないからなぁ。2017/04/20
501
8
美しさと残酷は相性がよい。銀婚式に妻と訪れた場所は昔旅先の田舎で熱烈な恋をした女性を社会階級の意識から裏切った場所だった。彼女との逢瀬がリンゴの木に象徴する幻想的なまでに美しい自然とともに描かれ、その主人公の軽薄にさえみえる判断による裏切りは社会構造に根していることを感じさせる。アシャーストの判断は残酷だがリアルで共感するところはあるももの、ミーガンの自身が死んだら主人公との思い出のリンゴの木のもとに埋めてほしいとの願いもかなえられず、十字路に埋葬される末路はいたたまれない。2017/03/07
みずいろ
7
男の人の恋の醒め方がほんとうにこうなら、とってもこわい。あまり感情的ではなく、流されるまま、言い訳すらほとんどないままに、5月の恋は終わってしまう。耳障りのいい言葉は、話半分で聞いたほうがいいな、と教訓。そして彼を自分の墓に導いたのは、女の最後の執念な気も…。そんなミーガンの想いはとても一途でかわいく、とくに枕にキスするシーンが好き。2016/06/06
mya*
6
文体がとにかく美しくて、ヨーロッパののどかな景色とあいまって切ないです。この時代背景は、現代ではなかなか実感することが難しいながら、儚くも美しい夢を見させてもらったような不思議な読後感です。2010/12/01