出版社内容情報
自らの生き様を刻印した、フィッツジェラルド渾身の長篇大作。精神科医ディック・ダイヴァーは、患者でもあり妻でもある美しいニコルと睦まじい結婚生活を送っていたが、若き女優ローズマリーとの運命の出逢いが彼の人生を大きく変えてしまう――。
フィツジェラルド[フィツジェラルド]
著・文・その他
谷口 陸男[タニグチ リクオ]
翻訳
BUFFALO.GYM[バッファロージム]
著・文・その他
内容説明
若き優秀な精神科医ディックは、富豪の美しい娘ニコルと出会う。医師と患者という垣根を越えて、恋に落ち、結婚した二人。富も名声も持ち、人を惹きつけて止まないこの夫婦は、多くの友人から敬われ慕われていた。二人の子に恵まれ結婚生活も順調に思われたリヴィエラでの夏、若き女優ローズマリーが現れディックに激しい恋をしたことから、彼らの運命が大きく揺さぶられ始める―。自伝的色彩を強く放つ、著者最大の長篇傑作。
著者等紹介
フィツジェラルド,スコット[フィツジェラルド,スコット][Fitzgerald,Francis Scott]
1896年、ミネソタ生まれ。ヘミングウェイとともに「失われた世代」の作家として知られる。大学在学中から小説を書きはじめ、一躍時代の寵児となる。が、のち人気を失いハリウッドの台本書きに転落する。1940年、最後の力を傾けて執筆していた『ラスト・タイクーン』が未完のまま、心臓発作で死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
106
精神分析医ディックが自分の患者である富豪の統合失調症の娘ニコルと危うい結婚をするが、売りだし中のハリウッド女優十八歳のローズマリーに見染められておのれを見失いかける、というのが上巻の流れ。「不動心」を失うと医者でもコロリ、グラリと簡単に傾いてしまう、まことに恋の道は危うく脆いものである。下巻を読むのが辛い。そもそもの原因はニコルの父が娘に犯した近親相姦の罪であったのに、可哀想なのはニコルではないのか…。下巻へ続く。G1000。2024/04/16
ケイ
102
南仏カンヌに休暇に来た有名になったばかりの若い女優とその母親。海岸で知り合った人達の中でローズマリーはディックとその妻ニコルと知り合う。初心なローズマリーはディックに惹かれるが、その気持ちの後押しをするのは彼女の母親だ。彼女は母を愛し崇拝していて何でも相談する。ステージママはこの時期にすでに存在していたのだとあきれるばかり。カンヌを含むフレンチリヴィエラで過ごす典型的なアメリカ人のお金持ちの様子と彼らの疎外感が全体に漂う。ニコルはあまりにも儚くて、彼女を守りきれないディックの辛さが物語を動かしていく2016/01/14
市太郎
52
構成の違うこちらは改訂版。オリジナル版と大きく違うのは冒頭部分。ディックとニコルの出会いを最初に持ってきた事でローズマリーの視点から入るオリジナル版のストーリーよりもわかりやすくなっている。どこかミステリアスなオリジナル版の冒頭も良いので賛否両論だろう。日本では訳者の違いもある。森氏は流麗、谷口氏は堅実という感じ。娘の恋を「どんどんやりなさい」と助言するローズマリーの母をはじめとして脇にも魅力的な人物が多い。ノース夫婦は後半の運命への暗示か。見過ごせないがオリジナル版の時は軽く読み流していた気が。下巻へ。2014/05/07
ちえ
22
学生のころ『華麗なるギャツビー』を読んで引き込まれ、この上下巻も当時購入したのだがそのままに。今回、何十年かぶりに読み始めたが、今となっては当時のように入り込めなくなっていたのが残念。予想以上に苦戦しながら下巻に進みます。読みながら二コルは「ナイル殺人事件」のミア・ファローを想像しています。感想は下巻で。2018/05/08
高橋 橘苑
22
フィツジェラルドのファンにとって、傑作の評価の高い作品だが、上巻を読み終えた正直な感想は、心に引っ掛かるものはなかったとしか言いようがない。未読だが、「優雅な生活が最高の復讐である」のマーフィー夫妻(主人公のモデルと言われる)や、その交遊関係にあった芸術家や上流階級の人達に興味の無い自分には、物語の設定自体に入り込めなかった。自伝的作品とも言われ、恐らくニコルはフィツジェラルドの妻ゼルダがモデルだろうが、執筆当時、既に精神病院に入院していたゼルダに対する配慮が感じられない。ねじれた愛情の表現なんだろうか?2017/03/30