出版社内容情報
1977年、20歳になったユリーン・スタンがヒッチハイクで選んだ車は、人の良さそうなフッカー夫妻が駆るブルーの小型車だった。そして……。長期監禁をした者とされた者の真実の姿が、ここにある!!
内容説明
1977年5月19日午後4時。ヒッチハイクで友人宅を目指す二十歳になったばかりのコリーン・スタンの前に、一台のドッジ・コルトが停車した。運転席には父親が、助手席には赤ん坊を抱いた母親が座っている。コリーンは自分とさほど年の違わないこの若夫婦の好意に何の警戒心も抱かずに乗り込んだ…。奇妙な拘束具・ヘッドボックス、奴隷契約書、そして―。膨大な検察調書を基に、七年間にも及ぶ孤独な幽閉・監禁生活を強いられた若き女性の恐怖や葛藤、さらに心理的歪曲の末、次第に変遷してゆく姿を生々しく再現した衝撃のノンフィクション。
目次
1 叫び声さえも
2 不信のコーラス
3 “K”
4 危険な先例
5 帰郷
6 適応の心理
7 暗闇へ戻る
8 スキャンダル
9 告白
10 司法の歯車
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しろ
17
☆7 日本でも記憶に新しい「尼崎事件」や「北九州事件」の欧州版を描いたノンフィクション。20歳の女性がヒッチハイクで若い夫婦の車に乗せてもらい、そのまま7年間もの間監禁されるという小説の世界さえ超える信じられない事件。「箱の中の女」として一部では有名なこの事件は、何年もの単位で箱に入れられ光さえ届かぬ恐怖から主犯である夫を愛してしまうまでいく異常な愛がある。監禁、凌辱、SM、暴力、それを経験した先に生まれる感情。これは経験した人にしか解らないものがあると思う。一つ言えるのは、この犯人は人間じゃない。2014/08/21
にゃむこ@読メ13年生
13
『奴隷飼うにゃ刃物はいらぬ、箱の一つもあればよい』、なんて、都都逸的なおふざけも憚られる、我々の想像を絶するコリーン(20)の監禁生活は、実に7年もの永きに渡る。比較的自由がありながら逃げ出さず(せず?)にいたのは、それほどキャメロンによる洗脳と肉体的な苦痛、恐怖に基づく支配が強烈だったのだろう。「何よりも生きるために」完璧な犠牲者でいることを選んだコリーン。現在はこの「失われた七年」分の人生も楽しめているだろうか。ところで、いつぞやの新潟の9年間少女監禁も、『完璧な犠牲者』だったのだろうか。2018/03/29
井戸端アンジェリか
12
誰もが思うだろうし、作中でもコソコソ語られる“なぜ逃げないのか”や愛人説に、このドアホ!!!を贈ります。想像してごらんよ、1日23時間も棺桶に入っていられるか?それも3年間。激しいムチの後の爪の垢ほどのアメがどんなに甘美な事か。従うしか生きる手立てがないじゃない、死にたくないもの。アメリカならではの長ーい懲役刑に、めでたしめでたし万歳三唱した後、変態クソ野郎の現在がちょっと気になったので調べて一安心。 それにしても、“箱”の写真がリアルすぎてケッチャム他の小説を読んだ時にはなかった怒りを感じる。2017/11/27
ペトロトキシン
12
日本においても似たような事件が起きており、誰もが最初に頭に浮かぶのは、「何故、逃げないのだろう?」という疑問であろう。この作品の被害者は物理的にも、かなりの長期間逃げ出せない環境下に置かれてはいたが、恐怖による支配力が人間に及ぼす影響には驚嘆するばかりである。驚嘆といえば、後半の一日23時間、3年間にわたって箱の中に閉じ込められて、よく精神がもったと思う。開放期間を経ているだけに、辛さ倍増だったに違いない。裁判の所で予算がないからの部分を読んだ時、アメリカの司法制度は大丈夫なのかと若干心配になった。2014/10/26
bam
7
なんと恐ろしい。ボンテージ、SMプレイなんか一部の愛好家を除けばただ苦痛な拷問なのにそれに耐えてさらに何よりも恐ろしい「箱」の中に閉じこけられて7年過ごすなんて…。怖い…。裁判の過程でイライラしたけど有罪になって本当に良かった。2014/02/25