内容説明
若く才能あふれる科学者フランケンシュタインは、死者を甦らせることに情熱をそそぐ。しかしその結果、生み出されたものは世にも恐ろしい怪物であった。その怪物は自らの孤独と悲しみから創造者フランケンの愛する家族を次々と襲ってしまう…愛する者を怪物から守ろうとする若者の苦悩と正義、醜く造られてしまった者の不条理な孤独と絶望の運命を描いた、壮大なゴシック・ロマン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nakanaka
86
約200年前の作品であること、作者が女性であるということ、私が知っている怪物像が原作ではかなり異なることなど意外な事実を発見できた読書になりました。天才科学者・フランケンシュタインが創り出した怪物が彼の愛する人々を殺害していく話ですが、フランケンシュタインの悲しみよりも怪物の悲しみや苦しみの深さの方が深刻であることが見事に描かれていて素晴らしいと感じました。怪物は知的で誠実な心を持っていたが故に自分の容姿や人間からの差別への絶望が大きかったのでしょう。映画やアニメでの怪物像は原作とかけ離れていますね。2018/05/23
Bugsy Malone
76
創元推理文庫版に続き読了。創元推理文庫版には無かった章タイトルや挿絵があり、文章も読みやすくはあるものの、その読みやすさがかえって物語の悲壮感を減じている様に感じた。解説では作者メアリー・シェリーの生涯を紹介し、その上で主要登場人物の怪物性、そして多種の告白体といった断片の混成形態をとる小説としての怪物性について興味深いお話しをされています。2023/02/09
MF
19
カバーはまるで別物ながら、おそらくこれが半世紀近い昔の中学生時代に初めて手に取った完訳本だったはず。伴侶を造ってくれと迫る怪物に「私はそれを拒絶する!」と答えるフランケンシュタインといったあまりの直訳調に苦戦しつつも、それまで接していた年少者向けダイジェストからは得られなかったずしりとした重さに心奪われたものだった。その後の読書人生を、さらには下手の横好きの域を出ぬ執筆活動さえも決定づけた一冊だったと半世紀近い年月が過ぎた今にして思う。
井戸端アンジェリか
17
『なぜ、造った。』ホントその一言に尽きる。身勝手で自己満足な知識で産みだし、グロテスクだからと打ち捨てる。それなのに自身で言葉を覚え知識を増やし良い子に育ったのよ。ひとりぼっちが寂しいと思うのはワガママなのか?責任を取れ!一応親なんだから。コッソリと屋敷に隠して共に暮らせば悲劇を防げたんじゃないのか。 最後まで名前のないまま終わりました。終盤の追いかけっこは怪物にとって唯一楽しいひと時だったろうね。2015/03/19
トントン
15
知っているから読まない,のつもりでいたが読んでよかった! 心理描写が秀逸。怪物を創作した学者フランケンシュタインだが,この名には,自分の造ったものに滅ぼされる人という意味があるらしい。無責任にも怪物は世に放たれる。怪物は初め,善き人々を観察しながら善き心を築き,知を蓄積して「対比列伝」「ウェルテルの悩み」「失楽園」を読破する知性を身につける。特に「失楽園」に深く魅入り,サタンと自分の境遇をひきあてて自らの苦悩を語るくだりは感動ものだ。サタンと同じく創造主を愛していたが,その一生は呪われたものに終わった。2021/09/25
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- 和書
- 殺す側の論理 朝日文庫