内容説明
フィリップは暴力的で血なまぐさいことが嫌いな、ナイーヴな青年だった。彼が愛するのは美しいものだけ。わが家の庭に置かれた彫像・フローラと、姉の結婚式で花嫁付添人をしたゼンダ。白い肌、波打つ銀の髪を持つゼンダは、彼の目にはまるで愛するフローラそのものとして映った。一目で恋に落ちた二人は情熱的に愛し合うが、甘い日々は長くは続かなかった。ゼンダが二人の愛の証明として、驚愕すべき提案を持ち出したのだ。そして、フィリップは逃れようのない運命へと足を踏み入れていく…。衝撃の結末へと加速する、官能的で壮絶な愛の形。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
16
なんとも狂った話で、登場人物の誰も好きになれないのに読み続けずにいられない厭さをもっているのがさすがレンデル。こういう盲目の愛、狂気の愛なんて、普通だったら投げ出す私なのに、この愛からは目が離せない。破滅に向かって一直線、と思いきや、その直線からふらふらと揺れてずれていく登場人物の動きの妙よ。そして、あのラストにたどりつく。面白かったです。2020/11/11
アカツキ
14
フィリップは姉の結婚式でブライズメイドをしていたゼンダに一目惚れ。ゼンダもフィリップを探していた運命の男性だと情熱的に愛し合うようになるが、しばらくしてゼンダから二人の愛の証にお互いあることをしようと提案を…。イっちゃってる系スピリチュアル女子のゼンダと肉欲の虜なフィリップ。序盤からゼンダが近づいてはいけないタイプの女性だとわかるだけに、ゼンダを追いかけてまでヨリを戻してしまうフィリップにもどかしい気持ちになりつつ、どんな酷い目に遭うか楽しみにしていた。が、終盤の展開に戦慄。2020/07/31
ののまる
13
ちょっとフィリップ君〜、何をおたおたワサワサモジモジと大騒ぎしとるんかい!って思っていたが、最後、うわっとなります。ルース・レンデル、心理描写書かせたらすごい読ませるなあ〜2022/01/23
Tetchy
5
今回は珍しく男の狂気じゃなく、女の狂える愛。故にいつもなら狂気がしんしんと降り積もっていくのに、男が正気に戻りかけた途端、突然の大破局が訪れた。そう、フローラよ、貴女は結局、幸運の女神だったのか?2009/03/04
madhatter
3
正直、本書で一番怖いのは、ゼンダの行為ではなく、彼女がフィリップに愛されていると強く思い込んでいること、そしてそれ故に、彼は何でもしてくれるはずと信じ込んでいることだった。勿論、彼女もフィリップを愛しているが、そのあまりの自己中心振りに対して、彼の気持ちが明らかについていっていない(時として、彼の中にあるのは性欲だけではと思う瞬間すらあった)。故に、犯罪に対する社会的制裁がいつ来るかより、二人の関係にいつ物凄い破綻が来るのかと終始ハラハラさせられた。そういう意味での破綻ではなかったが。2011/08/03