内容説明
6歳のある日、少年の身に何が起こったのか?家を出て戻るまでの数時間、まるでカーテンが降りたように記憶が空白なのだ。母親も周囲も、少年は知らない《男》につれだされたのだという。それから12年後、思い出の場所を訪れた男が見るものは?―「カーテンが降りて」。子供と母親、夫と妻、恋人同士、女友達、肉親同士、そして人間とペット…様々の関係に生じる愛憎の齟齬が生む残酷な悲喜劇を描きだし、レンデル・タッチを湛能させる傑作集。アメリカ探偵作家クラブ最優秀短篇賞受賞の表題作ほか10篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
25
作者の持ち味は人間がわずかに抱く悪意や不満といった負の感情が次第に肥大していき、あるきっかけで悲劇を招くことが非常に自然な形で読者の頭に染み込んでいくような丹念な物事の積み重ねにある。収録されている物語の結末は全てが数学を解くかのように割り切れるような内容ではなく、何かの余りを残してその後を想像させるものが多い。だからこそ登場人物たちが作者の掌上で操られているのではなく、自らの意志で行動しているように思える。作者は彼らにきっかけを与えているだけのように感じてしまうほど彼らの行動や出来事の成り行きが自然だ。2013/03/18
くさてる
18
人間の厭な面、ひととひとが関わることで生まれる不協和音、情熱と愛情がひとたび裏返ったとき、どんな恐ろしいことが起きるのか。レンデルの短篇は、そういったものを冷静な視点で綴っているように思う。単純な後味の悪さとかイヤミスとか、そんな言葉では表現しきれない。読後、ぐらっと気分が揺らされる。自分の価値観とかなんとなく信じているものの色が褪せてしまったような錯覚を感じる。レンデル、もっと読みたいです。2015/10/28
bapaksejahtera
15
「傑作集 2 熱病の木」に続いて読む短編集。短編ではあるが、登場人物のイメージが読み進めるうちに次第に明らかになる。10頁ほど過ぎると大逆転というパターンは同じだが、ボケた頭では何度か読み返して漸く理解できる具合なのは同じ。但し本集の方が気に沿う作品が多い。妻の浮気にとっさの反撃「誰がそんなことを」オカルト風味の効いた「生きうつし」結局は無為な親切だった「しがみつく女」嫌な妻に意図せぬ逆襲「コインの落ちるとき」人間嫌い動物好き男の気味の良い逆転「人間に近いもの」二重人格による暗転「分裂は勝ち」が良かった。2025/06/06
セロハン
4
サスペンス色強めな短編集。 昔レンデルの長編を、その心に響く心理描写にゾワゾワしながら好んで読んでいたのですが、 短編も、そのゾワゾワ読み心地が変わらないのがビックリ!文量少ないのにちゃんと心を揺らしてくれる素晴らしさ。2025/04/15
madhatter
4
再読。表題作が良かった。レンデルの身上が意地の悪い人間描写なのは否定しない。だが、本作はそれとは真逆で、センチメンタルと言えるほどに優しい。個人的に、人間の悪意に目を付けること自体は簡単だと思う。だが、人間はそれのみでできているのでもない(故に、悪意のみを描く書き手の人間描写を私は信用しない)。レンデルは斯様な人間の弱さや優しさを知っているからこそ、意地の悪い人間描写も説得力を持つのではないか。その他お気に入りは「生きうつし」「はえとり草」「しがみつく女」「酢の母」「分裂は勝ち」。2011/04/10
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