内容説明
“聖ルカの小さな夏”と呼ばれる小春日和の一日が終ろうとする頃、少年行方不明の報がキングズマーカム署に届いた。最近ロンドンから移ってきた母子家庭の10歳になる少年である。捜索隊が組織されたが、見つからないまま、その日は暮れた。ウェクスフォードもバーデン刑事も、8ヵ月前から行方不明のままの、もう一人の少女のことを思い出した。はたして二つの事件は関連があるのか?やがて少年のものらしい切りとった金髪の束が送られてきたが…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hit4papa
48
ウェクスフォード警部シリーズ⑥。二件の少年、少女の失踪事件を捜査する警部らの姿が描かれたミステリ。公園から少年が行方不明になり警察に緊張が走ります。少し前に帰宅途中の少女が忽然と消えたのでした。やがて少女の死体が見つかり、町は騒然となります。二つの事件の顛末は?…の真相究明より、妻が急逝した部下バーデンの、少年の母へのよろめきが主軸です。堅物バーデンが自身の子供らを顧みず、シングルマザーへのめり込んでいく姿は、シリーズの読者として軽い衝撃を受けます。著者ならではで、理性を失った男の心理描写は巧みですね。2022/08/09
bapaksejahtera
17
2作目から読むシリーズ6作目。管轄で起きた女児失踪事件に続いて今度は男児がいないとの通報を受け、ウェクスフォードと部下バーデンが捜査に当たる。バーデンは妻を癌で亡くし激しく落ち込み意欲に乏しい本作。亡妻の妹が二人の子供を含めて家族の面倒を見るが、愛妻に似た義妹に冷たい一方、男児の母親である元女優の美貌にはまり込む。この女は頗るの駄婦でやきもきしつつ読む。上司と友人の監察医とのやり取りは愉快だが、事件便乗犯の登場や、モテモテ美男子による関連事件が専ら描かれ、本件捜査がやや霞む。結末で何とか落ち着くが異色作。2024/12/25
Ayah Book
17
ウェクスフォード警部シリーズ第五作。とても面白かった。ほとんど全編がバーデン刑事のグダグダ。どーしようもねーなと思いつつも、しかしあとがきにもあるように、同情の余地がある人物として描かれている。レンデルさんは女性蔑視の嫌な男を描くけれども、決して表面的な見方をせず、多面的に書く。展開が遅かったけど、ミステリ部分は最後まで解決を引っ張り、読みごたえがあった。フレンシャムという登場人物がレンデルさんらしくて印象的!2021/10/26
みみずく
15
ウェクスフォード警部シリーズ第六作。今回の物語は妻を亡くしたバーデンが立ち直るまでの物語だった。不安定なバーデンは子供たちのことは義妹の好意に甘えてほったらかしだし、行方不明になった少年の母に惹かれて、溺れる…こんな状態なので捜査と警部のことはそっちのけ。事情が事情なので警部もぐっと我慢して、いつもの推理合戦はクロッカー医師がお相手だったが物足りなく、バーデンの不在を悲しむ所が父親のようだった。今回の恋愛を通じてバーデンの凝り固まった考え方に変化があったようなので、どんな人物に変わって行くか楽しみ。2014/09/21
Tetchy
10
メインの5歳児の失踪事件がサブに、サブだと思われた12歳の少女の失踪事件がメインにすり替わるという憎い構成。しかし物語のメインは事件のパートではなく、妻を亡くして失意に落ちているウェクスフォードの部下バーデンの私生活にある。亡き妻の妹に子供の世話を任せて家庭を顧みず、失踪事件の依頼人に好意を抱き、毎夜通ってはセックスに溺れる。なんとも情けないキャラに堕ちているのだ。久々にレンデルを読んだので忘れていたが、レンデルって確かにこんなだったなぁと再認識した次第。しかし最後の大団円が納得行かないんだけど。2011/12/24