内容説明
ニュー・オーリンズには雨が多い。メキシコ湾から吹き上げる風が、湖沼地帯を湿らせる。湖沼に黒人女の死体が浮かんだ。第一発見者はデイヴ・ロビショー―ニュー・オーリンズ警察警部補、ケイジャン、インテリ、離婚一回、元アル中…検死の結果は溺死。だが、ロビショーの目はごまかせない。娼婦、死刑囚、ニカラグアからの亡命者―狂気と背中あわせの者たちを相手にロビショーの個人的な捜査が始まった。’90MWA長編賞受賞作家のシリーズ第一作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
260
著者のジェイムズ・リー・バークは、それまで6つの純文学作品を出版していたが、本書で初めてこうしたジャンルに挑戦し、成功を収めたようだ。分類上はミステリーということになるのかも知れないが、内実はタフなハードボイルドに真骨頂を発揮する小説だ。主人公のロビショーは、ハードボイルドには当然の孤独な刑事なのだが、彼は自らが属する警察組織や他の国家機関(CIA)からも孤立する存在である。ニューオーリンズを舞台に展開する物語は著者に独特のスタイルであり、評価の高さも肯ける。ことさらに詩情をたたえた終幕の寂寥感は見事。2015/12/07
ケイ
108
いいミステリ作家に出会えたなと思う。解説にある通り、デイブは所謂タフガイではない。犯罪者にも共感でき多少の妥協もすることのできる他にはないタイプの主人公。その感じが舞台であるニューオリンズやルイジアナの雰囲気とよくあっている。私が訪れたのは書かれた頃より10年ほど後だが、バーボンストリート、ケイジャン料理、チコリ入りのコーヒー、カフェ・デュ・モンドでの朝食を思い出させ、あの独特の街への郷愁をかき立てた。そういうノスタルジックな気持ちにさせるのは文章を磨いてきた作者が手掛けたミステリだからこそだろう。2016/05/22
まふ
83
「抒情性が抑えきれない」ハードボイルド警察小説。ベトナム戦争での心の傷を持ち、アル中を克服したはずのニューオーリンズの市警警部デイブ・ロビショーが黒人売春婦の死因に不審を抱き、チンピラから始まり次第に地域の巨悪の核心に単身肉体で挑み、暴走の結果、無期限の停職処分を受けながらも、満身創痍の中孤独な戦いを続ける。全編を通じドライな行動と「ニヒルな純情」が読者に気持を昂らせつつのめり込ませる。終わり方も余韻を持たせ、重厚な読後感を得た。G1000。2023/03/05
sin
80
物憂いまでのモノローグが情景を…心情を…語っていく文体にある種詩情すら感じさせるが、どっこい主人公が遭遇する暴力は生半可なものではなく、また警察組織を無視した行動は刑事というより正にダーティーハリーな一匹狼!ハードボイルドそのものだ。彼は正義を求めるが自身を窮地に追い込み、置き去りにされ、自分なりの落とし前をつけて諦観に至る。◆英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1000冊を読破しよう!http://bookmeter.com/c/3348782016/03/14
NAO
78
マフィアが、政府の大物と手を組んだとんでもない計画。裏切り者は、すぐそばにいる。やさしく手を差し出し協力するような顔をして、裏では足を引っ張り殺害計画をたてている。マフィアの狙いは何か。誰が裏切り者なのか。手に汗にぎる展開だが、あまりにも暴力的すぎて、好みではない。2020/12/11