内容説明
プルーにとって軍隊は宇宙だった。しかも彼が自分の足場を見出した唯一の宇宙。だがその足場は急速に薄れつつあった。かつて対戦者を不具にし、二度とボクシングをしないと誓ったプルーに、拳闘班の執拗な勧誘がつづく。中隊長が師団選手権をほしがるからだ。頑として応じないプルーに、圧力は使役、懲罰訓練という苛酷なかたちをとって襲いかかる。そしてロリーンという娼婦への愛。実らざる愛、わが物にできぬ愛、それもまたプルーを苦しめるのだった。軍隊とは?そして兵士の愛とは?軍と戦争を描き出す巨編第2巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
58
ボクシング選手として期待されているのに戦うことを拒み続けるプルーイットに懲罰訓練が課せられる。個人的な感情を持つことを全く認めない軍隊という組織の非情さが描かれていく一方で、兵士たちを相手にする娼婦たちの日常、不実な夫に病気を移された妻の苦しみもかなり悲惨。赤裸々に描かれる軍隊の周辺における性モラルの低さには、驚き呆れるばかりだ。2017/11/03
takeakisky
0
こそばゆい日本人への尊敬の念。幼稚さと老成の奇妙な混淆。知識が力にならない兵隊の世界。ますます異なる将官と兵隊の対比。かたや情実を徹底して排除したマクロの視点、かたや誇りや善悪で世界を測る、若しくは目の前の利害で今日を生きる極めてミクロな視点。プルーイットより、もう一人の主人公とも言えそうなウォードンの方に気持ちが傾く。少し調子の狂った中庸。全体的に頭でっかちな議論が多い。火薬樽の上の暮らし。やり切れないマジオの破綻。プレクシグラスの宇宙服。鬱屈が極限近くまで溜まり、そろそろストーリーも動きはじめるかな?2024/08/24