感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
43
バーナド、ネヴィル、ルイス、スーザン、ジニイ、ロウダ。海辺の田舎家で過ごしていた就学前の子ども時代から始まり、学生時代、夏休み、友だちの送別会など、人生における忘れがたい一日のある時間が切り取られ、その時々の心の内を、六人が独白する。年月を経ても六人の個性は変わることなく、繰り返し語られるのは、波のように寄せては返し、とどまることなく流れていく時の移ろいのこと。自分を語り、友を語り、幼い頃の淡い希望から、歳を重ねての静かな回顧へ、独白はとめどなく流れる。淡く、もろく、美しい、散文詩のようなウルフの世界。2016/01/25
あかつや
6
男3人女3人、それぞれのモノローグで進行していく小説らしきもの。彼らの少年時代から始まって大人になっていく。特に話の筋というものはなく、彼らの語りもこちらに対してわかりやすく説明してくれるということはない。むしろウルフお得意の「意識の流れ」であっちへこっちへふらふらっと揺らめくようで、とらえどころがない。でも不思議なことに、読み終わった時にはちゃんと彼ら6人の人生が自分の中で組み立てられてるんだよなあ。寄せては返す波のまとまった全体が海であるように、人の意識や無意識の積み重ねが人生ということなんだろうな。2022/06/02
rosa
6
海中に沈んだ五線譜に、感情の音符が色付き、音楽を奏で始める。それは夏の木漏れ日の下、語り合った友と詩の朗読会を始めるような心地に似ている。みんな笑っている…。しかし、それは酷く朧気なのだ。あの夏の日が二度と聴く事の出来ない音楽の一部だと知っていたら。僕等は同じ事をしたろうか。たゆたう波ばかりが後に残る。文章の一つ一つが作者の臨終と重なり、胸が詰まってしまい、とてもやりきれなくなってしまった。知ることも、理解することも止め、ただ感じること。 2012/06/04
29square
4
ウルフを読み続けて来て良かったと心から思える作品。 まず、各部に先立つさまざまな時間の波や庭の描写に心震わせられる。そして何よりも「波」が寄せては引き、盛り上がっては砕け散り、後から寄せる波に掻き消されるその様を人生に例えるアイディアは浮かんだとて、それを一編の、複数人の登場人物がいる小説に纏め上げた感性と才能には驚嘆しかない。 それにしても、再読したいから新訳はやく出してほしい。旧仮名遣いはさすがにキツイ。2021/02/09
アレカヤシ
3
(人生というものはわたしたちがそれを語ろうとするような方法で以てしては感得し得るものではないのだ)P262 比喩、象徴が満載でとっても辛かった。詩は苦手です。自分は頭の血のめぐりが悪いのでダイレクトに書かれていないとよく解らない。人生なんてよくわからないものは比喩や象徴でしか語れないということなのかも知れない。この本には人生が写されているのかな?よくわからない。訳が古いせいか、自分の教養のなさか、書かれている日本語がおかしいと感じるところが多かった。違和感があった。出来れば新しい訳で読みたいと思った。2018/11/30