内容説明
櫛森秀一は、湘南の高校に通う十七歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との三人暮らし。その平和な家庭の一家団欒を踏みにじる闖入者が現れた。母が十年前、再婚しすぐに別れた男、曾根だった。曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振る舞い、母の体のみならず妹にまで手を出そうとしていた。警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれないことを知った秀一は決意する。自らの手で曾根を葬り去ることを…。完全犯罪に挑む少年の孤独な戦い。その哀切な心象風景を精妙な筆致で描き上げた、日本ミステリー史に残る感動の名作。
著者等紹介
貴志祐介[キシユウスケ]
1959年、大阪生まれ。京都大学経済学部卒。生命保険会社に勤務した後、フリーに。96年、「ISOLA」が第三回日本ホラー小説大賞長編賞佳作となり、『十三番目の人格―ISOLA―』と改題し、角川ホラー文庫より刊行される。翌年『黒い家』で第四回日本ホラー小説大賞を受賞、同作は一〇〇万部を超えるベストセラーになる
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サム・ミイラ
616
読み終えた後様々な思いが溢れ、また最後の文章が映像のように頭から離れなくなり眠れなくなってしまった。大義があってもそれが殺人ともなれば、成功しても失敗しても罪の重さに一生涯苦しみ続ける。普通の生活には戻れなくなる。期せずして秀一もそれを味わう。まさかこんなはずではなかった。計画を練る高揚感、追い詰められる息苦しさ。読者も秀一と同じ苦しみを味わう事になる。それはとても怖い体験。少なくともこれを読んだ者は犯罪を犯す気にはなれなくなるだろう。それほどまで現実的で重く悲しく胸を締め付ける作品。紛れなき傑作。2014/08/02
青乃108号
404
貴志祐介3冊目。今まで気にならなかったのに、読点のやたら多い文体に違和感を感じてしまい、ここの読点は要らないよなあ、などとばかり気になり、どうにも集中出来ない。母1人子供2人の平和な家庭に突然割り込んできた異物を、やむなく排除すべく周到に完全犯罪の計画を練り実行した男子高校生の物語。アリバイトリックの為の計画実行中に運悪く幼馴染みに目撃された為、またしても第2の完全犯罪を犯す事になり…主人公がロードレーサーで疾走する場面が多用され、それに伴い物語の疾走感も加速していくのだが、読点の多さがブレーキになって。2024/11/08
takaC
400
正に青い。2004/10/25
yoshida
375
結末が予想できて、とても哀しく切なかった。高校生の櫛森秀一は母と妹の三人で暮らしていた。櫛森家に母と離婚したかつての義父・曾根が入り込み居座る。粗暴な曾根から、母と妹を守るため秀一は警察や弁護士に相談するも埒があかない。懊悩の末、秀一は自分が手を下すことを決意する。秀一の計画は綻びがあり、脅しや追及、そして良心の呵責に苦しむ。秀一が家族ともう少し話しが出来ていれば、このような手段を選ぶことはなかったと思う。秀一が家族を守るという気持ちが強かったからこそ起こってしまったのだろう。越えては行けない一線がある。2018/02/03
sk4
368
完全犯罪を目論み実行する高校二年生の、怒りと葛藤と恐れを事細かく描いている。 誰にも言えない孤独と戦い続けていよいよ追い込まれた時に、見えてなかった部分で助けてくれていた友と恋人、そして助ける決心を告げてくれた妹に気付かされて、ついには兜を脱ぐ。 万能感に踊らされて大人のフリして、最後は罪を償った後の自分の人生の絶望感に納得して一人で消える青い炎。幼い炎。 もっと視野が広かったら、もっと運が良かったら、もっと鈍感だったら、こんなに悲しい結末ではなかったはず。 胸が潰れそうでした。2012/09/10