内容説明
ずっと一人になってみたかった。あんなに結婚したかったのに、離婚したら、自由になった。一人で生活するのは淋しい。その淋しさが嬉しいこともある。誰とも口をきかず一日中本を読んだり、ぼんやり日に当たったり、淋しさに耐えかねて友人に電話をしたり。32歳の著者が、経験する初めての一人暮らし。何もかもが自由なのに、ときどき不安になってすこーんと落ちてしまう、日々の揺れを細やかに綴った、日記エッセイ。
目次
魚久の粕漬と労働意欲 一月
冬の起床時間と細かい仕事 二月
春のインドア生活、読書編 三月
テレフォン・ア・ゴーゴー 四月
痩せようとすると何故太るのか 五月
物も恋も捨ててしまう 六月
夏のインドア生活、TV編 七月
ダメ人間コンビニにゆく 八月
そば屋通いと発作的引っ越し 九月
フリーであるということ 十月〔ほか〕
著者等紹介
山本文緒[ヤマモトフミオ]
1962年神奈川県生まれ。OL生活を経て、人間関係の繊細なずれから生じる喪失、慈しみをテーマに作家活動を続け、現在に至る。『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞を、『プラナリア』で第124回直木賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kei302
64
千秋楽を前に、曙が若乃花にかわず掛けで負けてしまいむっとする、平成8年33歳の文緒さま。 凪良ゆうさんの山本文緒さんを悼む(朝日夕刊)の一文、「山本さんはエッセイでも高い評価を得た作家だ」に深く深く頷きました。 さすが凪良さん、そのとおりです。文章のリズムがいい、どうしようもない状態なのに暗さを感じさせない、社会全体へのまなざしが鋭い。 インド旅行記が面白すぎて、泣いたり笑ったり寂しくなったり。2021/11/01
Comit
64
Kindle Unlimited~著者が30代の時に書き連ねた日記をまとめた一冊。著者の職業遍歴や、作家になったきっかけ、作品へのこだわり、旅への思い入れ、とても興味深く読ませてもらいました。人との繋がりを短くても濃く、その瞬間を大切にする生き方は見習いたい。離婚されて一人暮らしをされていた時期の日記。もう一冊、著者がうつ病を患った時期の日記をまとめたものもあるみたいなので読んでみたい。2021/04/23
ほのぼの
46
32歳で離婚してひとり暮らしを始めた著者。その年の日記形式のエッセイ。ほとんどが日々の生活の記録。燃えるゴミを出すとか、6時半起床とか。日記そのまま。生活をのぞき見しているようで申し訳ない気持ちになってしまう。4年後、12年後を追記。その間の闘病をサラッと明るく語られているが、その後58歳という若さで亡くなられたことを思うと切ない。2024/06/14
おいしゃん
39
ゲラをファックスで送ったり、パソコンにおっかなびっくり触れてみたりと、時代を感じさせるエッセイ。 むなしさを感じていた著者が、作家業をこれこそ自分の生きる道と見いだすさまはドラマティックでありつつ、その後原稿に追われうつ気味になっていく姿が切ない。2022/03/24
あつひめ
38
タイトルにひかれて手に取った…ら…これはすごい。作家さんの本当の日常をすべて見せてくれているではないか。心の上がり下がりまで。私も今無性に一人になりたい。なれる環境ではあるけれど老いた両親と同居しているので戸籍は1人でも暮らしは3人。いつか1人で好きな時間に起きて好きなものを食べてダラダラ暮らしたいと思う反面、山本さん同様、もし病気になってしまったらと思うとそれも不安だ。夜型でお酒飲みの山本さんも4年後には朝6時には起きている生活になって人っていろんなことを乗り越えながら暮らし方も変わるんだなと思った。2024/04/28