内容説明
ある日なんの前触れもなく、他人の私を「予知」した女。突然の出来事に驚きながらも、彼女は予知の魅力に溺れていく。何度も予知を試みるうちにその能力は次第に変化し、やがて彼女は念ずるだけで人を殺せるようになる…。天啓の如くに得たこの能力で、彼女がねらった男の運命は…。悪の愉しみにとりつかれた女の姿を描く異色長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふるい
11
突然意のままに人を操って殺せる能力に目覚めた"わたし"の、悪へ傾倒していく様が愉しい。悪と言っても、派手なものではなく、"力"を存分に使うために生活はむしろ質素らしい。前半の、小説家志望だが書く時間が取れないため仕事をやめ、父の遺産の掛軸を売り働かずに生きていく金を作る顛末が面白い。あと、"わたし"が新聞配達の中年女性を揶揄う少年をいきなりビンタする場面があって、読んでて妙に高揚してしまい、何だか自分の密かな願望を言い当てられた気がして、変な汗が出た。(同じく職なしアラサー独身女としてはネ…。)2022/01/05
三柴ゆよし
2
想像していたよりおもしろくなかったのは、背表紙の文章と奥泉光の解説を先に読んでしまい、ピカレスク・ロマンみたようなもんかという、漠然とした先入見を抱いてしまった所為かもしれない。内容云々よりも、明瞭さをまるで欠いた文章のほうが、怖いといえば怖い。それにしても、河野多恵子×角川ホラー文庫という発想はなかった。2010/07/03
タリコ
1
妖しい力を持った主人公。力の使用に対して逡巡がないところが怖い。悪意が明瞭な形を持たず、主人公の行動の中に当たり前のように立ち現れる。ターゲットを定めたときの用意周到さ、独特なぬらりひょん的文体が不気味。2009/03/29
龍國竣/リュウゴク
0
恐い。読み進めるうちにねっとりとまとわりついてくる文章そのものが恐い。女の自覚されない悪意に満ちた日々を、作者の主題である子供への執着も含め、情念たっぷりに描き出す。「今日、自分は人を殺した。女を焼き殺した。手並みはすばらしかった。賞讃する」(p.45)2014/10/25
ののじ
0
悪の魅力について淡々と分析する主人公…恐いす。でも主人公があまり活動しないのでちょっと退屈かも2012/11/21