内容説明
著名な女流作家・大原鳳月が若手演出家とともに、自宅の茶室で焼死した。編集者・堀口は鳳月の秘書の若桑律子に鳳月をモデルにした手記を依頼する。だが、その手記は筆が進むに従い、まるで鳳月が書いたかのような流麗さをおびてくる。律子は大原の遺作を隠し、自分の名前で世に出そうと目論んでいるのか?謎を追う堀口が見たものは―。死してなお、消えない愛執の念を描いたホラー小説。
著者等紹介
篠田節子[シノダセツコ]
東京都生まれ。東京学芸大学卒業。1990年「絹の変容」で第三回小説すばる新人賞を受賞。97年『ゴサインタン』で第一〇回山本周五郎賞を受賞。同年『女たちのジハード』で第一一七回直木賞を受賞
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
319
この小説の着想の元になったのは、まず篇中にも何度か登場するモーツアルトの遺作となった「レクイエム」である。すなわち、全曲の半ばで息を引き取ったモーツアルトの後を受けて、凡庸な(?)弟子のジェスマイヤーが後半を師匠ばりに完成させたこと。ただし、ここでは触れられていないが、「レクイエム」には、もう一つのエピソードがある。それは、この曲を注文にやってきたのが黒装束の男で、モーツァルトは死神からの依頼かと思ったこと。もう一つの典拠は謡曲「砧」だろう。プロットは全く違うのだが、ここには「後妻(うわなり)打ち」と⇒2018/02/02
Take@磨穿鉄靴
56
今月入って篠田節子氏は3冊目。他の2作に比べるとハマらなかったかな。ホラーではなくサスペンス仕立てなら印象全然違ってくるんだろうけどそうなると違う話になっちゃうからね。とにかく魅力ある登場人物が居なくて入り込めなかった。編集担当が20代の若手ではなくそれなりのベテランに対応させればもう少し違った反応、ストーリーになったのではないか。最初から最後まで置いてきぼりなまま終わってしまった。★★☆☆☆2019/08/23
エドワード
29
女流作家・大原鳳月が若手演出家と焼死した。編集者の堀口は、鳳月の秘書の若桑律子に、鳳月の数奇な生涯を書くように勧める。ところが律子の文章は鳳月のものにそっくりだった。鳳月と律子の関係は?カラクリがあるはず、と合理的に考えようとする堀口の周りで次々と起きる怪奇現象。律子に何が起きているのか?「私の人格は、私の人生は私のもの…二度と渡さない。」二人の女の愛と怨念がぶつかりあう様がすさまじい。<書く>という行為にかける執念の物語。律子の修辞たっぷりな文章が結構面白い。小池真理子さんが解説というのもピッタリだ。2018/02/07
マリリン
18
篠田作品、初めて手にした。芸術の世界では非現実的な現象との境界にこのような事実もあるのではと思いつつ読み終えたが、展開や脳裏に浮かぶ情景は緩やかに淀むことなく進んでいった。ホラー小説と書いてあったが、森山東作品を思い出した。三島由紀夫のような純文学の要素もあるのではと感じた。2018/04/05
陽
12
大原鳳月、若桑律子の容姿がリアルに想像できるような内容だ。 この著者の作品は物語の世界に引きずり込まれる魅力がある。 すごく面白い内容でもないんだけど、女性の描写がうまいよな。 こういう幽霊なら大歓迎なんて思えてしまう。 俺は作詞、作曲するけど、ときに自分の意思では到底、作り出せないような作品が出来上がるときがある。 神が自分の体を使って作りだしたのではないか?と思うような作品が生まれるんだ。 そんなことと、この小説はリンクするよな。 2016/01/15
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